『良かれ、悪しかれ。グチャグチャ、思わんでも、ええ。

   必ず。あしたは、やってくる。

   あしたは。あしたの、風がふく。』ってね。

  だれかの。受け売りじゃあ、ないけど。

   おとうさんは。この、言葉を。じでいった、人だったよね。

  思い出しても。おとうさんの。

  「こまった。どうしたら、ええんじゃ。」って、言う。

  泣きごとの、ような。言葉。一度も、聞いたこと。ないしね。

   おとうさんが。泣いているの、見たこと、ないものね。

  仕事が、無くて。困ってた時も。

   ケロッとした、顔して。

   「休みが、あるけえ。あそこ、行くか。」言うから。

   知らない、私は。おとうさんに、ついて、いってたしね。

   あとに、なって。

   「あの時。ほんまは。大変やったんや。」って、聞かされてね。

  我が家に。不幸が、あった、時も。

   ワアワア、泣いているのは。わたしだけで。

   おとうさんは。いつも、気丈にね。さい配を、ふるって。いるんだものね。

   みんなに。人一倍。優しく、してくれて。

    けっして。冷たい、人では。なかったけど。

   人前では。涙を。流さない、人。だったよね。おとうさんは。

  あんな、たいへんな。病院生活でも。涙、一つ。見せな、かったもんね。

  長いとは。言えないんだけど。おとうさんとの、生活で。

   なにか、あったら。いつも。泣き喚いて、いるのは。わたしでね。

   そんな、わたしの、そばに。

    いつも。黙って、いてくれて。いたんだ、ものね。おとうさんは。

   黙って、いるから。頼りに。ならないんじゃあ、なくて。

   いつの間にか。助け船を。出して、くれてね。

  それが。当たり前に、なってたから。

   おとうさん。わたしの、前で。泣くの。忘れて、いたのかも。しれないよね。

  眠れない、夜はね。おとうさんの、写真見てたらね。

  「あしたは。あしたの、風がふく。」

  「ゴチャゴチャ、思わんでもええ。」

  「今まで。なんとか。やって、これたやろ。」

  「大丈夫や。わしが。ここに、おる。」ってね。

   言われて、いるようでね。元気が、出て。くるんだよね。おとうさん。

  だってね。おとうさんの、写真。

   どれも、これも。くやしいぐらい。笑顔、いっぱいの。

    いい、写真。なんだものね。 

     ねえ、おとうさん。