「おとうさん。おはよう。」
いつものように。ローソクを、一本立てて。線香立てて。
ごはんを、しんぜて。お花の、水を、かえて。
わたしの、一日の、始まりだね。
ほんの、二か月ちょっとの間に。こんなに。かわって、しまったんだよ
「おとうさん。今日は。どんな、調子。」って。聞くと。
「まあ、まあかな。」って。言ってたよね。
病院に、いる時は。毎朝。五時半になると、ケータイで。おとうさんに、かけてたよね。
「もうじき、採血や。いるもんは。また電話する。
調子が、よかったら。リハビリが、できるかもしれん。」
今の時代。血液検査の、データで。何でも、知ることができる。
そんな、理由で、おとうさん。毎日、毎日。採血していたよね。
「おとうさん。わたし。血管、細いやろ。なかなか、血が、とれんのんよ。」
「検診の時。どこの、看護師さんも。こまっとるわ。」って。
わたしの方が、おとうさんに、言ってたんだよね。
おとうさんは。スポーツも、やってたし。もともと、血管の、太い人だったものね。
それなのに。
「もう、腕からも、足からも。看護師さん。血ようとらんのや。」言うて。
脇の下から、細い、チューブ入れてたよね。おとうさん。
かわいそうに。どこも、かしこも。青あざが、できてたものね。
あそこまで、する必要が、あったのかな。
昨日も。長男が、言ってたよ。
「おとんは。自ぶんが。もう、ながくないこと。
分かっとったんと。ちがうんやろか。」
「なんでも、よう、かたずいとる。おかんと、違う。」ってね。
「いま。おかんに。あの世に、行かれたら。
何にも、わからん。ぐちゃぐちゃや。」言うんよね。
時々、病院での、ふとした時の。おとうさんの、表情思い出すよ。
あの時。他の人だったら。どんな、言葉。かけたんだろうね。
わたしは。おとうさんのこと。一生懸命。してあげてる気に、なってたけど。
本当は。おとうさんが。私の為に。気をつかって、くれていたんだよね。
正直。はらたつよ。「なんで。もっと。ぬけてないんだろうね。」ってね。
こんなに、完璧に、やられると。かなしいよ。
「おとうさん。あれ、ないよ。」
「おとん。あの書類。どこに、おいとんやろ。」って。
わたしたちを。困らせて、みてよ。
「やっぱり。おとんでも。ここ、ぬけてるわ。」って。
言いながら。わたしたち、母子が。笑えるもの。
そんなもの。残して、欲しかったよね。 ねえ。おとうさん。