マンタナイト…
この時、私は私の海の師匠と共に潜った。
見上げると、畳一畳分よりも大きなマンタが、
夜中の海を舞う…
圧倒された大自然の大きさだった。
幾つも群れが舞う…
人間など小さな生き物……
彼らの視線は、もっと先を見据えて優雅な気分で
海の中を舞う…舞う!
師匠の三女の女の子は、自閉症を抱えて生きている。
私は師匠から海で生きるための技術を習得する
間は、いつも自閉症を抱えて生きている女の子も一緒に生活をしていた。
学校でいじめにあって最初からほとんど喋らない女の子……
彼女は、小学生以来ずっとずっと言葉を発しなくなった。
女の子は、24時間も眠らず起きている……そして24時間も眠る……
海外の海へ女の子を連れ出した。
自閉症の女の子の三半規管は、元気な人間よりも
繊細に乗り物へ反応する。
飛行機も車も乗り物酔いが、半端でない分だけ
女の子はパニックを起こしてしまう。
私と師匠は、交代でずっと女の子をできるだけ背負いながら海外を旅した。
女の子の声を聴きたくて……
女の子が笑う姿を見たくて……
愛していることを伝えたくて…
それから半年以上の女の子との奮闘が続いた。
女の子は、少しだけ笑うようになって。
女の子、少しだけ声を出すようになった。
障害も大きな個性。
だけれど生涯ずっと家族は向き合うのだ。
だから、少しでも前を向いて生きてくれたら
家族も周りの仲間も笑う時間の中で生きれる……
小さなことが大きな一歩に繋がるのだから。