ごく普通の主婦であった彼女たちがなぜ仲間の夫の死体をバラバラにしたのか!?
深夜の弁当工場で働く主婦たちは、それぞれの胸の内に得体の知れない不安と失望を抱えていた。「こんな暮らしから抜け出したい」そう心中で叫ぶ彼女たちの生活を外へ導いたのは、思いもよらぬ事件だった。なぜ彼女たちは、パート仲間が殺した夫の死体をバラバラにして捨てたのか?犯罪小説の到達点!
 
登場するのは、深夜の弁当工場で働く主婦たちで、皆それぞれ家庭に問題を抱えている。経済的・社会的に下層に置かれた女たちだ。主人公の雅子は、信金に勤めていたものの、不当なリストラに合い、深夜の弁当工場勤めを選ぶ。学校を退学になった一人息子は、緘黙症のようになりしゃべらなくなった。夫は出世コースから外れたサラリーマンで、休日は自室に引きこもりがち。雅子の夜勤と重なり、3人の家族は家庭内別居状態も同然だった。
 
夫亡き後、義母の介護をしながら高校生の娘を育てるヨシエ。内縁の夫と暮らす、クレジットローンまみれの邦子。ホステスに入れあげた夫に、貯金をバカラに使われてしまう弥生。雅子の仕事仲間も皆、不幸を背負って生きていた。弥生が突発的に夫を絞め殺してしまうと、雅子たちは夫の遺体をバラバラにし、死体遺棄の犯罪に加担することになる。
 
「那須夫婦遺体事件」が記憶に新しいが、この場合は焼死体だったらしい。闇バイトの犯行だ。雅子も、弥生の夫をバラバラにした後、快楽殺人者の佐竹の陰謀により邦子の死体処理を請け負う羽目になる。不幸な堅気の主婦と前科持ちの裏社会に生きる男とが出会い、対峙したその先に見えたものは何なのか?
 

殺された邦子も、ヨシエや弥生、雅子もみな困窮した今の生活から抜け出そうと毎日必死だった。傷だらけになりながらも彼女たちは「解放」を求めた。自分を束縛しがんじがらめにしている〈OUT)な現実社会からの「解放」。雅子の暗くて長い彷徨の末の「解放」を見届けた時、私の胸にずっとつかえていたモノが雲散霧消した。