一家離散によって幸せな生活を失った女子高生の真由。義父の虐待から逃れ、街で身を売るリオナ。二人は運命的に出会い、共に生きる決意をする。ネグレクト、DV、レイプ。最悪の暴力と格闘する少女たちの連帯と肉声を物語に結実させた傑作が、遂に文庫化。

 

この作品に出てくるのは、家庭にも、学校にも居場所を失ってしまった少女たち。大人たちから棄てられ、虐待され、居場所を求めてJKビジネスの世界に入っていく。


JKビジネスとは

 

女子高生を売り物にしたサービス業で2000年代中ごろの簡易マッサージサービス「JKリフレ」が始まりとされている。その後、摘発を受けるも「JK撮影会」「JKお散歩」「JKコミュ」と名前や業態を変えてあらゆるサービスが登場した。もちろん、ただ撮影や会話をして終わるわけではない。ある店では膝枕やビンタ、添い寝、指舐めなどのオプションが用意されており、どれも1000円ほどで追加できるシステムになっている。最近では摘発の影響を受け、JKビジネスの主戦場はSNSに移っている。警察庁の発表によると、SNSによる事犯の被害児童数は増加傾向にあり、その中でも児童ポルノや児童買春が増えている。(桐野夏生が見たJKビジネスの危うさ「17歳以下の少女は肉のつき方が違うと目を輝かせ…」朝日新聞出版の本 2018/10/29/ 17:20 AERA dot.)

上記対談中に、桐野さんはマンスプレイニング(「女は男より無知だ」というジェンダー的偏見から、男性が女性に対して偉そうな態度や見下すような態度で、知識をひけらかしたり解説したりする行為)が、JKビジネスの発展に影響していると感じていると指摘する。

“幼いほど性的に価値がある”と考えることは、個々の欲望の問題ですから誰も口を挟めない。が、その欲望に叶うようなアイドルを提供することは非常に危険です。しかも、全国紙が特集を組み、評論家たちが魅力を語る。彼女たちに政治を学習させる企画もありました。これは一種のマンスプレイニング(男性の上から目線の説明)。"

 

この「マンスプレイニング」に対して、真由とリオナは連帯して立ち向かっていく。搾取され虐げられ続ける二人だが、決してやられっぱなしではない展開とラストシーンに桐野さんの熱いエールを感じた。