忙しさに感けてここから遠ざかっていて、無為な、しかし慌ただしい日常が過ぎていき、気がつけばもう6月も下旬。

 

この数ヶ月、家族の用事なんかで私の休日はほぼ潰れた。水墨画の練習もさぼってたし、お芝居も観てない。御朱印めぐりなど頭の片隅に追いやられてる。

 

唯一の楽しみが読書。スキマ時間にちょこちょこ読んでたら、結構な冊数になった。そろそろ記録しておこうと思う。

 

 

太平洋戦争末期、探偵小説好きの石目鋭二上等水兵は、軽巡洋艦「橿原」に乗務を命じられた。「橿原」は過去に怪死事件が相次ぎ、殺害の実行犯がいまも潜むと囁かれている。艦底の内務科5番倉庫では、機密物資を運んでいるという、不穏な噂も絶えない。そんな折、艦内で士官が毒死、乗組員が行方不明になった。やがて次々と生起する怪異なる事象に、石目もまた取りこまれていく。真偽不明の指令乱発で指揮系統を見失った兵士たちに、「橿原」の真の目的地が明かされる。一方、船底の大戦争を生き延びた人の魂を宿す鼠の群れは、長い対話のなかに自らの行く末を探る。果たして「神器」とは何か、そして乗組員の使命とは? 異界を抱える謎の軍艦に時空を越えた無数の声を響かせ、壮大なスケールで神国ニッポンの核心を衝く、驚愕の〈戦争〉小説。野間文芸賞受賞。

 

 

上下巻で1000ページ以上の長編大作で、読了するのに大変苦労した。異界を抱える軍艦「橿原」。その船艇には潜水服を着た「天皇陛下」が張り付いている。日本の敗戦は天皇陛下が「贋物」だからであり、天孫降臨をやり直さねば勝てないと信じる、橿原に乗り込んだ国粋主義者たちとそれに同化させられていく水兵たち。狂気に走る彼らは天孫降臨の再演のための生贄として橿原を沈めようと「タカマガハラ」をめざす。

 

奇怪でグロテスクなSF推理小説だった。奥泉光の小説を読んだのはこれが初めて。いや、SF自体が初めて?椎名誠はSFだったか?椎名誠以来か。そんな感じでSFが久しぶりだった。テクストの情報量が半端なく、時空も行ったり来たり。敗戦間近の日本が舞台の壮大でぶっ飛んだ戦争小説だった。とにかく大変だったネガティブ