倒木から脱輪まで、盛り沢山 | 見えない翼

見えない翼

私達は誰もが夢に向って翔る“見えない翼”を持っています。しかし、多くの人々が夢を追う事を諦め、翔る事をいつしか忘れて・・・。
そんな世の中にあって、パラグライダーの世界一へ挑戦し続ける父と重度の障害を持ちながらも懸命に生きようとする息子の奮闘日記です。

<ツアー8日目> 晴れ のち 雷

前日の夜に、余りにも悪い天気予報だったので、

今日は、コアラを見に行くか?ワイナリーに行くか?

と、観光する話をしていた。


しかし、蓋を開けてみると、何だか良い天気?

いかにもサーマルが出ていますと言わんばかりの

綿菓子雲が充分に間隔を開けて、空に浮かんでいる。


慌てて天気予報を見ると、全く別の予報に変わっている。

寝ている間に変えたな!  (ーー;)


オーストラリア人サポーターのデニス(Denis)に、

ビッグチェンジと言わしめる程の天気の変化が、

本日起こる様々なハプニングの序章である事は、

この時点で知るよしも無かった。



計画を急遽変更して、テイクオフ場に上がる事にした。

どうやら北風が吹いているようなので、

昨日までとは全く違う北風用テイクオフ場へ向かった。

南東風用テイクオフ場から20分程走ることになる。


15分程走った所で、第一のハプニングに遭遇した。

巨大な倒木が道を完全に塞いでいたのだ。

チェーンソーでも時間が掛かりそうな大きさで、

人間の手では到底動かせそうにない。


見えない翼-倒木
カメラ 倒木


しかたなく、歩いて見に行く事にした。この時、

日本人は全員がキャノピーを持たずに車を離れた。

これが後で後悔になるとは、思わずに。



歩く事20分で、テイクオフに着いた。

良い風が吹いて、怪しげな雲も何処かへ消えていた。

皆が飛ばないならとキャノピーを持ってきた

デニスが飛び立つとあっという間に上がっていく。

しまった、キャノピーを持ってくるのだった!


森を抜け出て視界が開けた所は、

テイクオフまでの中間点だったので、

そこでキャノピーを取りに引き返せば、

大したことはなかったのだろうが・・・。  (^^ゞ


正に、 『 後悔先に立たず 』



皆は慌てて車に戻って、キャノピーを担いできた。

おおよそ、1時間の行程だったと思う。

中には、歩きつかれて、飛びがヘロヘロの人も居た。


今日は、体力が有る人はXCに出る事ができ、

無い人は近場で降りてしまった。



XCに出て30分が経過した頃は、所々で発達していた

積雲の底から、雨が落ちていくのがよく見えた。


見えない翼-空中滝
カメラ 空中滝


丁度、流れ落ちる滝を横目に見ながら通過する

アバターのワンシーンをイメージすればよいだろう。

(実は、雨の横は意外にも良く上がるのだ。)


14時になると、様子が激変しだした。

天気予報でも出ていたサンダーストーム(雷雨)が

現実に目の前で生まれ始めたのだ。


最初は、南の方に誕生したので、進路を南西に。

その内に、南西方向に広がり始めたので、西に。

すると、今度は西の方向までと、

瞬く間に取り囲むように発達していった。


遠方ではあるが、既にダウンバーストが発生しており、

津波の様に波が我々を飲み込むのも時間の問題だ。

飛んでいるお客さんに、急いで逆方向へ逃げて、

安全な所に降ろすように指示を出した。



しかし、ここで第二のハプニングが発生する。

先行していたOさんが、北西方向へ進路を変えて

飛んで行くと言い残したまま、音信不通となったのだ。


空中でいくら問いかけても応答が無い。

地上に降りると電波が届かなくなるので、降りずにいた。


突風が来る直前は、何処でも上がるようになるのだが、

もし追いつかれれば、大荒れになり、降りることは愚か、

飛んでいることもままならなくなる。


追いつかれるギリギリまで呼びかけを続けたが、

応答は無く、これ以上待つと私が危険なので、

降ろす事にした。



川地が地上まで200mを切った所で、ようやく

「北に向かって飛んでいます! (^^♪」 と

呑気な返信があった。


K:「XCは中止です。早く安全な所へ降ろしてください!」

O:「は~い、分かりました (^^♪」


ダウンバーストによる突風と本来の風がぶつかって起こる

コンバージェンスが発生していたので、

おそらく、それに乗ったと思われる。


見えない翼-ダウンバーストコンバージェンス
カメラ ダウンバーストによるコンバージェンス


回さずとも真っ直ぐ飛んでいるだけで

高度が落ちずに、いやむしろ上がっていくので、

こりゃいいやとXCして、そのまま距離を伸ばしたのだろう。


しかし、

それは台風時に発生する大波で

サーフィンをする様なものだ。

一つ間違えば、大怪我は免れない。

(良い子は決して真似をしないでください。(ーー;) )



川地は偶然通りかかった回収車に、

パッキングが終わって、0分で拾われた。


それから、再三

Oさんに電話をしたが通じず、SMSにも返信が無い。

空中に居る時に返信があったからといって、

降りるまで無事とは限らない。


仮に、降りた時に足を骨折でもしたら・・・、

(突風が引き荒れているので、)

(その可能性は普段よりも非常に高い)


土砂降りの雨が直ぐに降ってくるだろうから、

急激な体温低下を招くので、命が危険な状態になる。

(そこまで、切羽詰った状況だったのだ)

(だから、ギリギリまで必死に呼びかけをしたのだ)



もう、待つしか方法はない。

Oさんは、コンディションを読む能力があるので、

もう少し良識の有る行動を取るだろうと思っていたが、

甘かったようだ。



近くの町で全員に夕食を取ってもらっている時に、

SMSが一通送られてきた。

安全に降りた事と、降りた場所の座標が記されていた。


60km先まで飛んで行ったらしい。

おそらく往復で2時間はかかる。

お客様には町に残ってもらい、回収へ向かった。



予想通り、往復には2時間かかった。

時刻は既に19時を回っていて、新年早々なので、

どの店も閉まっており、町はゴーストタウンと化していた。


お待たせしたお客様を乗せて、

キラニーへ帰ろうとしたその時、

第三のハプニングが起こった。


つい先程の豪雨の影響で、川が増水して、

橋が冠水していたのだ。他の道から帰ろうと、

Uターンしようとした時に、それは起こった。


ぬかるんだ路肩でタイヤがスリップして、

溝に落ちてしまったのだ。


見えない翼-脱輪
カメラ 脱輪


またまた待つ事1時間、

レッカー車が来て引っ張り上げる事ができた。

不幸中の幸いだったのは、車がほぼ無傷だったこと。



本当は、ここで書かなかった事が山ほどあったのだが、

この3つの事件が大き過ぎて霞んでしまった。

今日はハプニングが多かった一日だった。


つ・か・れ・た! (*´Д`)=з