たった一人の訓練 | 見えない翼

見えない翼

私達は誰もが夢に向って翔る“見えない翼”を持っています。しかし、多くの人々が夢を追う事を諦め、翔る事をいつしか忘れて・・・。
そんな世の中にあって、パラグライダーの世界一へ挑戦し続ける父と重度の障害を持ちながらも懸命に生きようとする息子の奮闘日記です。

<療育施設>
今日は音楽療法の日。だが、お友達は皆お休みで、
翔がたった一人で訓練を受けるらしい。

一対一のプライベート・レッスンだが・・・、
一人では盛り上がるはずもなく、全然面白くなさそうだ。
翔にいつものような笑顔はなかった。

音楽療法の先生は、よく「次はどんな歌にする?」と聞いてくる。
当然、翔は答えられないので、私が翔のお気に入りの曲である
「おうまはみんな」
「さんぽ(となりのトトロ)」
「つくしのムック」などと
代弁するのだが、どれもレパートリーではないらしく、
殆どの曲が却下される。


だったら最初から聞かないで、使える曲を歌って欲しいのだが・・・。 

結局、いつもの「犬のおまわりさん」になる。
そして、今日は歌詞を間違えて歌った。

翔はこの歌を知っているので、“笑う”
そう、なんと翔は歌詞を間違えたり、
音程やリズムを外したりすると分かるのだ。

先生はそうとも知らず、
翔が歌を気に入って笑っているのだと思い、
更に間違ったまま熱唱する。

そして、翔が大笑いをするのである。
時には、“そこ間違っているよ!も~”と言いたげに、

 翔:「わああぁまああぁふんんん、ブ~」と大声を張り上げる。
先生:「そう、もっと歌って欲しいの!? (^^ゞ」
というようなやり取りが何度も繰り返された。

事情を知っているパパは、笑いを堪えるのに必死だった。