ひとことで言って、この調査結果を診療報酬改定の材料にしてもよいのかというのが、率直な気持ちである。
診療報酬改定の前年に行なわれる医療経済実態調査(以下「実調」)は、モニター医療機関を設定し、連続して調査しているわけでない。その都度調査客体が異なっている。
まずその時点で、統計的な連続性が失われているということになる。
一般市民にとってわかりにくいのが、個人立の診療所のデータである。「実調」には、「給与費について、個人立の一般診療所においては、開設者の報酬部分は含まれていない」と明記されているが、この点が報道されていない。
あたかも一般的に高いと思われている開業医が、自分の給料を取って給与費にそれが含まれ、さらに月200万以上の利益が生じているように見えてしまう。
実際には個人立の診療所の場合、この220万あまりが開業医の取り分に相当し、そこから税金などを支払うわけだ。
おそらくこのくらいの収入だと、40%程度税金で持っていかれるのではないだろうか。さらに借入金がある場合は返済していくわけだから、220万あると言ってもそれほど飛びぬけて高い水準と言えないという判断も出てくる。
またさらに、「勤務医よりも高い水準」などと報道されている。
心配なのは、このような記事が一人歩きすることにより、優秀な学生が医学部を目指さなくなってしまうのではないか、ということだ。
皆保険下で、高いとは言えない国民医療費のもとで医療の質が、かなり高い水準に保たれているのは、現場の医療関係者が優秀で勤勉であることに拠るところが大きいだろう。
もう少し、医療関係者が夢を持てるような報道ができないものか。
使命感に期待するだけの状態が、いつまでも続くとは思えないのである。