小さな旅
名前: 陣太鼓上杉謙信の「九月十三夜」霜満軍営秋気清数行過雁月三更越山併得能州景遮莫家郷憶遠征霜は軍営に満ちて秋気清し数行の過雁(かがん)月三更(つきさんこう)越山(えつざん)併(あわ)せ得たり能州(のうしゅう)の景遮莫(さもあらばあれ)家郷(かきょう)遠征(えんせい)を憶(おも)う。注 数行=幾列かに並んだ様 三更=一夜を五更に分けて今の八時を初更とし、二更は十時、四更は午前二時、五更は午前四時頃を言う。よって三更とは真夜中の十二時頃を指す。 能州=能登 遮莫=どうなってもよい。ままよ仕方がない。真っ白な霜が我が陣営に満ちて秋の気配が清々しい。幾列もの雁の群れが空を飛んで行き真夜中の月が照り映えている。越後、越中の山々そして、手中にした能州を併せたこの光景は実に素晴らしい。故郷では縁者が遠征のことを案じていることだろうが、今夜はこの美しい十三夜の月を静かに賞でよう。「荒城の月」土井晩翠の詩「秋陣営の霜の色 鳴きゆく雁の数見せて 植うる剣に照り沿いし 昔の光今いずこ 」に合致するように思う。