山 よもやま話 その8 低気圧 | I

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薀蓄才粋人

 

山屋にとって厄介な存在の気象現象が低気圧の接近である。これが近づくと山は確実に荒天になるから、殆んどの場合が登山中止という事になる。現在の様にポイントで当地の予報が解る時代と違って自分達で天気を予測する事が多かった時代は、山に入ってしまってから荒天に巻き込まれる事も、ある意味では必然的であった。それでもラジオから流れる気象通報を基に稚拙な天気図を作っていた頃が懐かしい。

今で言う太平洋高気圧は当時は小笠原高気圧であったし、気圧を示すヘクトパスカルもミリバール表示で有り専用の天気図用紙に、その情報を素早く書き込んで作る天気図の正確さを競う事も山屋の一つの楽しみであった。

「松本、北東の風、風力3、天気晴れ」・・・次から次へと流れる情報は一ヶ所でもつまずくと次への対応が出来なくなるのだから今、この作業をやれと言われても反応能力の衰えを思うと無理であろう。

天気図作成の上手下手とは別に当時の山屋は大雑把な知識として認識していた事象が有る。

移動性の低気圧はおよそ時速40㎞で東進して来るというものである。九州から関東地方までの距離は約1000㎞であるから今日の朝、九州が雨ならば関東地方も明朝は雨になる可能性が大きい事になる。更には当該低気圧が日本列島の太平洋岸の、どの位置を進むのかという事が重要であった。

低気圧の進行方向に対して左右(実際には南北)各150㎞(合計で300㎞)の帯地の中が荒天になる可能性が大きいというもので、中心線に近い程荒天になりやすい事は自明の理として認識していたのである。

高気圧は正義の味方(?)だと思っていたので、日本列島に強い高気圧が二つ並んでいた場合は、その中間に気圧の谷が有って荒天の可能性が有るという現代の予報知識は全く無かったので、この場合でも安心(確信)して登山を実行していたのである。そして登山中に降雨に遭遇すると「モナカの皮じゃ有るまいし溶けるわけが無い」とうそぶいていたのだから、これもいい加減な天気図作成と同様に懐かしい思い出である。

ここで嫌われ者の低気圧について考えて見よう。代表的な熱帯低気圧(台風)は場合によっては私達の実生活に多大な被害をもたらすが、その一方で海水を真水に変えて陸地を潤してくれるという事実である。台風による降雨が塩水であるならば生物は生きてゆけないであろう。海水を真水に変えるメカニズムは専門家に任せるとして、事実は真水製造機であり、しかもその費用は無料である。更には地球全体の気温を考えた場合、熱帯地方が酷暑にならない様に高緯度地方に絶対的な熱量を送る事によって温度調節をしているというのだから、大自然の理に適う現象に敬意を表するという事になる。

上空で高温と低温の空気がぶつかると、その地点では天候不順になり荒天になると言われているが、ここに停滞前線が発生するという事であろうか。このメカニズムも素人には全く解らない現象である。

水(降雨)が一瞬のうちに、あたり一面を潤してくれた時、「水撒き自動車(散水車)なり何台必要だろうか」と馬鹿な疑問を思った事が有るが、人類にとって高気圧と低気圧は果してどちらの貢献が大きいのか、それは高い山の頂上に立って「俺は球状の地球から相対的に見た場合、果して高いところに居るのか低いところに居るのか、どちらなのか」という疑問に似ているようにも思えるから不思議である。