Dr.誠です。

最近NHKの報道に感心します。
『NHKスペシャル パンデミック 激動の世界 (6) 「“科学立国” 再生への道」』(2020/12/20放送)。素晴らしい放送回でした。科学立国としての根底が歪んでいる現状をリポート。ぜひ再放送があれば見ていただきたい内容です。



ことの発端は2004年。
国立大学が自己の採算性を求められるような、独立行政法人化してしまったことが原因で、研究の主力となる若手研究者の立場が非常に危ういものになってしまったのです。そしてその後の『財政再建』を口実にした、大学への交付金の削減が致命的でした。取材を受けていた『コロナワクチン』の研究をしている科学者ですら、非正規雇用。生活のために休日もアルバイト。研究室はたったの3人だけ。
















採算や短期間での成果を求めるようなことは本来、研究の可能性を阻害する愚行でしかありません。いい加減その過ちに気がつかないと、科学ですら先進国から転落することでしょう。しかし、とくに安倍政権以降、そうした現場を理解しない、銭や採算性しか見えない連中があまりに跋扈しすぎた。成果のすぐにでない『基礎研究』を国がおろそかにしすぎてきた。銭にならんものは無駄だというスタンスがどんどんと露骨になってきた。文系軽視はその最たるもの。

番組の最後に元文部科学大臣の有馬氏が言うように、
『科学も教育も国家100年の計』
のはずなんです。科学者たちはちゃんと、こういう
『水も与えないのに果実だけ貪ろうとする国』
に対して、人間として中指たてないといけないと思いますよ。それがこの国で科学者として生きていきたい人間の、引いてはいけない一線だと思います。

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まあ私も実際自分が大学院生でしたので、当事者として思うことは色々あります。(院は一年で中退しました)。医者は別に研究しなくても臨床医として普通にやっていける訳ですから、大学院は①半ば義務として、②わざわざ『年間50万』大学院に学費を払って、③ちゃんとボーナスや手当ての出る病院常勤職を辞めて『非正規雇用』として、入学したわけです。医者って基本そういうシステムになっていますしね。まあアカデミアなんてこんなもんなんです。(注…恩師や医局をDisる意図はありません(笑))

お金にもならず、身分も不安定で、資金も自分たちで取ってくることが求められて、そのくせ成果ばかり求められるようなこと、私にとってはストレスでしかありませんでした、正直。楽しいとは思わなかった。ちょっとは順応できるかなあとも思ったのですが、やはりダメでした。あれは研究やアカデミアという存在が大好きな『貴族』の方々が、嗜みでやることだと思いました。私みたいな俗っぽい、生きてる人間や政治の世界が好きな人間には、せめて身分保障でもしてもらわない限り、無理ですわ。



しかし、そうしたことを、国がその貴重な担い手となりえる学者や学生に、少しでも『そう』思わせてしまったとしたら、その時点で
『国の科学政策として』負けなんです。少しでも国の発展に資する存在は、大切に育てていかないといけないはず。しかし日本は全く正反対の政策を取っている。愚かの極み。

暴論ですが、私はこの国の科学が崩壊するなら、いっそちゃんと崩壊してしまえばいい、と思ったりします。寧ろ誰かがそういうことをちゃんと言わないといけない。それぐらいこの国の科学者は冷遇され、そしてそれでも構わないと国から思われている。その荒野となったアカデミアを国が心の底から後悔すること以外に、残念ながら解決策はないのかもしれません。国は学術や研究の現場のこと、あまりにわかっていなさすぎる。国が少しでも理解してるなら、今すぐアカデミアの非正規雇用を国が責任もって国費で賄い、雇うことです。それしかないでしょ。



個人的な思いがいっぱい入りましたが、学者も医者も一応人間ですからね。霞を食って生きてる訳じゃない。科学者の善意とやる気にただ乗りした
『やりがい搾取』を、
科学者たちは許していてはいけません。



ま、この国はなんでもそうだけどね。
イカれてる。