「会社を作っても、数年でほとんどなくなるらしい」。そんな話を聞くと、起業に興味があっても不安になりますよね。ただ、その数字は本当に「倒産した割合」なのでしょうか。
企業の数字を見るときは、件数・倒産率・生存率を分けることが大切です。似ているようで、それぞれ数えているものが異なります。
■「倒産が増えた」と「倒産率」は別の話
東京商工リサーチの集計では、2025年の全国企業倒産は1万300件でした。負債総額1,000万円以上が対象で、前年より2.9%増えています。
ここでの2.9%は、倒産件数の増加率です。「日本の会社の2.9%が倒産した」という意味ではありません。倒産率を考えるには、対象となる企業全体の数も必要になります。
💡 架空の例で考えると
1万社のうち100社なら、割合は1%。1,000社のうち20社なら、割合は2%です。
件数は前者のほうが多くても、割合は後者のほうが高くなります。「何社のうち何社か」まで見ることで、数字の意味が変わってきます。
■ 生存率は「成功する確率」ではない
2023年版中小企業白書では、創業後5年の企業生存率として80.7%が紹介されています。ただし、データベースの特徴などにより、実際より高めに算出されている可能性があるという注意書きもあります。
この数字を「今から起業すれば80.7%の確率で成功する」と読むことはできません。会社が存続していることと、黒字であること、希望する収入を得ていることは、それぞれ別だからです。
逆に、100%から差し引いた19.3%を、そのまま「倒産率」とすることもできません。事業を終える理由は一つではなく、存続しなかったことと、倒産したことは同じではないのです。
■ 数字を見るときの3つの確認
① 何を数えたのか。
倒産なのか、休廃業なのか。会社だけなのか、個人事業も含むのか。まずは対象を確認します。
② いつから、いつまでの数字なのか。
1年間の件数と、創業後5年間の生存率は、そのまま比較できません。「2025年」と「2025年度」も、集計期間が異なる場合があります。
③ 分母と注意書きは何か。
割合の下にある小さな注記まで確認しましょう。データに含まれない企業があると、数字から言える範囲も変わります。
■ 起業の判断は、自分の条件にも目を向ける
統計は、世の中の動きを知るための材料です。そのうえで、自分のサービスを利用する人はいるのか、継続して提供できるのか、入金と支払いの時期はどうなっているのかを確かめます。
大きな数字に安心したり、怖くなったりする前に、「この数字は、自分の何を判断する材料になるのか」と考えてみてください。分母と条件を知ることが、落ち着いて判断するための一歩になります。
HPの記事では、倒産・廃業・生存率の違い、調査機関による集計範囲の違い、数値を読み違えないための具体例をまとめています。出典の原資料も掲載しています。
参考:東京商工リサーチ「2025年の全国企業倒産」、中小企業庁「2023年版中小企業白書」。記載した数値は、それぞれの資料の対象期間に基づきます。