Masquerade Game(金田一ルート) 2 | 向日葵の宝箱

向日葵の宝箱

まじっく快斗・名探偵コナンの小説を中心に公開しています。
快青大好きですが腐ではないコナンと快斗の組み合わせも大好きです!
よろしくお願いします。

「高遠が・・・脱獄!?」
美雪からのライソのメッセージを確認したはじめは目を大きく見開き呟く。
それからすぐに、美雪が合わせて送ったネットニュースのリンクをタップしてそのページを開いた。

食い入るようにそのページを読み込んだ後ではじめは美雪に電話を掛けようとして発信ボタンを押した。

「はじめちゃん?」
「ああ、美雪。俺だけど・・・。」
はじめが言い掛けた、その時。

ガラリと勢いよく音を立てて、はじめの自室の扉が開いた。
「はじめ~。刑事さんが来てるんだけど。あんたまた何かやらかした?」
有無をいわさずにはじめの母親が部屋に入ってきてはじめの顔を覗き込む。

ちょうど美雪と話し始めたとこだったのに・・・と。
そう思いながら溜息を吐いたところで、はじめは顔を上げた。

「刑事って・・・。剣持のおっさんか?」
はじめの問いに母親は頭を振る。
「ううん、剣持さんじゃないわよ。なんか公安がどうのこうのって。」
「公安!?」
声を上げたはじめが片手にスマートフォンを握り締めたまま部屋を飛び出し階段を駆け下りる。

玄関に向かうとそこには見慣れないいかつい顔をした男性刑事が二人並んで立っていた。

「金田一一(はじめ)さんですね。」
刑事の一人が警察手帳を出しながらたずねた。

「えっと・・・。はい。そうですけど。何か?」
応えたはじめに刑事達が一瞬顔を見合わせて頷き合うと、再びはじめを真顔で見て言った。

「高遠が脱獄した事はご存知ですね。」
その言葉にはじめは唇を強く引いて頷く。

「今ネットニュースで見たばっかだけど。知ってるよ。」
「なら話が早い。脱獄した高遠は前回の高遠逮捕の協力者であるあなた方の前に現れる可能性が高い。よって、本日より高遠を再逮捕出来るまでの間、私共であなたを護衛させていただきます。」
その言葉にはじめは目を丸くした。

「護衛・・・?まさか1日中あんた達が俺のまわりにくっついて来るって事?」
「その通りです。対象者の護衛の為に我々が24時間交代で寝食を共にしあなたを守ります。どうぞご安心を。」
その言葉にはじめは大きく目を見開くとそれから深い溜息を吐いた。

(剣持のおっさんならともかく。どこの誰かも知らない刑事に24時間みはられてたらたまったもんじゃねぇぞ。)
心の中で呟いたはじめは、微かに握っているスマートフォンから聞こえてくる声に気づいて慌てて耳許にあてた。

「はじめちゃん!!はじめちゃん!!もう、はじめちゃんたら!!自分から電話掛けてきて!!」
「わりぃわりぃ。」
そう人差し指で頭を掻くとはじめはそういえば・・・と思い、美雪に問いかけた。

「美雪、今の俺達の会話全部聞こえてたよな?」
「うん。」
その問いに応えると美雪は頷いて言った。

「私のところにも来てるの。刑事さん。公安の刑事さんらしいんだけど、今回、この前の紺碧島の高遠さんの事件の関係者全員に護衛として公安の刑事さんが配備されてるんだって。」
「へぇ~。」
応えながらはじめは目の前に並ぶ刑事達に交互に視線をやる。

「そうすっと、黒羽とか青子ちゃん、蘭ちゃん達のところにもみんな公安がはりついて高遠の警戒にあたってるって事か。」
「うん、そうみたい。」
美雪はそう言うと、少しだけ不安そうに言った。

「はじめちゃん。高遠さんが脱獄したって。だからはじめちゃんがまた危険な目に合うんじゃないかって私・・・。」
「大丈夫だよ。」
言い掛けた美雪にはじめはカラリと笑いながら応えた。

「俺は大丈夫だから心配すんな。」
改めてそう伝えたはじめに美雪が「うん」と明るい声で頷く。

「それより心配なのは黒羽と青子ちゃんだよ。前にも話したけど、なぜか高遠はここんとこ黒羽に執着して毎回青子ちゃんと二人で狙われてる。」
「うん、そうだよね。青子ちゃん達、大丈夫かな?」
再び不安そうに声をもらした美雪にはじめは応える。

「大丈夫。ぜってぇ高遠の思い通りにはさせねぇから。それより美雪。お前はこの際だから家でじっとしてろよ。」
「はじめちゃん・・・。」
「せっかく刑事が護衛についてくれるっつんならしっかり守ってもらえ。お前だってあの事件に関りが深いんだし、高遠はおそらくお前の情報くらいとっくの昔に調べ上げてるだろうからな。」
「うん。」
はじめのその言葉に美雪が少し張りつめた声で応える。

美雪ははじめと行動を共にする事が多い事から、いままで事件に巻き込まれて負傷を負ったりした事も少なくはない。

しかも高遠は奇術師だ。
油断をしていればすぐに隙をつかれる。

だから、絶対に油断のならない相手なのだ・・・と。
はじめは改めて思い返し、掌を握った。

「はじめちゃんはどうするの?」
美雪の問いにはじめは玄関に並ぶ刑事達に横目で視線を向ける。

「とりあえず、明智さんに連絡して、ここにいる刑事達をどうにかしてもらった後で剣持のおっさん達と合流しようと思う。」
「そっか。」
美雪は応えると、耳許で囁くような静かな声で言った。

「はじめちゃんも、気をつけてね。」
「ああ、美雪もな。それじゃまた、何かあったら連絡しろよ。」
「うん、わかった。」
呼び掛けたはじめに美雪が頷く。

「じゃあね、はじめちゃん。」
「ああ。」
応えるとはじめは終話ボタンを押した。

それからすぐに、スマートフォンの電話帳を立ち上げると、発信ボタンを押す前に少しだけ息を吐いた。

(はあ、いやだいやだ。いやいや・・・、リラックスリラックス・・・、落ち着け俺・・・と。)

自分から積極的に連絡を取りたい相手ではない。
だけど今は仕方ない。

強く、そう自分に言い聞かせて。
はじめは『明智』と書かれた名前を選択したところで、ディスプレイの発信ボタンを押した。

『はい、もしもし。金田一君ですね。』
「ああ、明智さん。あのさ、話があるんだけど。」
ワンコールもせずに電話に出た当人の声にはじめは目を大きく見開きつつ、目の前の刑事達に目をやりながら話し始めるのだった。