果てしなき迷宮(ダンジョン)20 | 向日葵の宝箱

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まじっく快斗・名探偵コナンの小説を中心に公開しています。
快青大好きですが腐ではないコナンと快斗の組み合わせも大好きです!
よろしくお願いします。

阿笠博士が工藤邸の目の前で車を止めると、助手席にいた快斗が先に降りて後部座席の扉を開き、蘭を横抱きに抱えた。
それからコナンは降りる間際に前方に顔を寄せて阿笠博士を見つめる。

「博士、たぶん大丈夫だとは思うけど。念の為、灰原を良く見張っておいてくれ。」
「了解じゃ。」
応えた博士にコナンが頷く。
「それじゃ、頼んだぜ。」
そう伝えると、コナンは、運転席側の後部座席の扉を開き、外に出た。
それから用心の為、周りを注意深く見まわした後、快斗の元へと向かう。

「家に入ると、母さんと父さんがいるから。」
そう伝えたコナンに快斗は数瞬目を大きく開くと微笑して頷く。
「わかった。」
応えた快斗に笑みを返すと、コナンは快斗の前を歩き、先に鍵を開けて玄関の扉を開いた。
そこには既に、優作と有希子、それに、現在この家の住人である沖矢昴の姿があった。

「おかえりなさい、コナン君、黒羽君。」
「黒羽君、いらっしゃ~い!!」
「面倒を掛けたね、黒羽君。」
昴と有希子、優作にそれぞれ声を掛けられ、コナンと快斗は少しだけ照れたように顔を見合わせ微笑する。
それからコナンは顔を上げて言った。

「蘭を寝かせたいんだけど。客間は使える?」
「もちろん。準備しといたわよ。」
笑顔でウィンクしながら応える有希子にコナンは頷くと、玄関で靴を脱いで快斗の前を歩き始めた。
そして、客間のベッドサイドの明かりをつけて快斗を招き入れる。

「こっちに蘭を寝かせてくれ。」
「了解。」
応えた快斗は、枕の上に蘭の頭をのせてベッドの上に下ろすと、ゆっくりと腕を離した。

「ゆっくり眠れるといいな。」
「ああ。」
応えたコナンに快斗が横目でたずねる。
「お前も隣に寝とけば?疲れただろ?」
「バーロー。それより・・・。お前が先だよ。」
そう言うと、コナンは快斗の腕を強く引いた。

そして、客間の扉を閉めて、廊下を歩くと自分の部屋。
つまり、工藤新一の部屋まで有無を言わせないほどの強引さで快斗を引っ張ってきた。
それから、ベッドの上に快斗を座らせる。

「おとなしく待ってろよ。すぐに来るから。」
「へいへい。」
「たくっ・・・。」
苦笑して応えた快斗にコナンは溜息を吐くと、いったん部屋を出てすぐに戻ってきた。
それから、目の前に立ち、持ってきた応急手当の箱をベッドサイドにおいた。

「腹と胸の傷、手当てさせろよ。」
そう真剣な表情で快斗を見つめ言った。
「別にいいよ。名探偵ならわかってるだろ?防弾チョッキ着てたし、血のりとオレの名演技で出血はごまかしたから撃たれた傷は大したことねぇって。」
「そうかよ。」
そう言うとコナンはあえて快斗の胸のあたりを拳で軽くたたいた。

「いってぇ・・・。」
「当然だろ?防弾チョッキで弾の貫通を防いだって、威力そのものを消せるわけじゃねぇんだ。ましてや、胸の真上から撃たれたんだから、打撲や内臓破裂、骨折している可能性は高い。どうせまた自分で適当に治療して済ませようとしてたんだろ?」
「大当たり。」
痛みをこらえる様に胸をおさえたまま苦笑した快斗にコナンが大きく息を吐く。

「オレが治療するから、早くシャツを脱げ。」
「わかったよ。」
快斗は言われるがままにシャツを脱ぐと、撃たれた箇所の具合を見つつ、すぐに手当てを始めたコナンに視線を落とした。
そんな快斗にコナンは言った。

「お前、わざと探偵バッジの通信をオープンにして、俺に全部蘭やジン達との会話を聞かせてたろ。」
「ああ。」
応えた快斗は口許を上げながら応える。

「とりあえず、現状を伝えとけば、超優秀な作戦参謀が一番ベストな手を打ってくれるんじゃないかと期待してね。」
「お前・・・。」
「事実、その通りだったし。」
そう言って笑う快斗にコナンはもう一度溜息を吐いた。

「それにしたって。よりによって、あの組織に一人で立ち向かうなんて。」
「しゃーねぇだろ、今回ばかりは。」
「だからって。まだ防弾チョッキで防げる胸や腹だったから良かったけど。頭撃ち抜かれてたらひとたまりもなかったぞ。」
「わかってるよ。その可能性も考えてなかったわけじゃねぇけど。さすがにそっちは防ぎようがなかったし。」
「だから無謀だっていうんだよ。」
今日何度目になるかわからない溜息を吐いたコナンに快斗が苦笑する。

「本当に、こんな無謀な事、もう二度とすんじゃねぇよ。」
「ハハハッ・・・。」
快斗は指先で頬をかきつつ応える。

「努力はするよ。ベストエフォート・・・・ってやつ?」
「お前なぁ。それ、絶対やる気のないヤツがいうセリフだから。」
コナンはそう言うと、快斗の腹部に掌をあてた。

「ここ、だいぶ縫った痕があるな。もう薄くなっちゃいるけど。何があったんだ?」
「ああ、まあ・・・な。」
少しはぐらかしつつ応えた快斗にコナンは唇を強く引くと、無言でそのまま最後まで手当てを続けた。
しばらくして「これで終了」とコナンが告げると、快斗が「サンキュー」と答えて、シャツに袖を通し息を吐いた。

「じゃあ、オレはこれで帰るから。」
「いや。」
応えるとコナンは快斗を真正面から見つめる。

「父さんと母さんと昴さんのところにお前を連れていく。」
真剣なまなざしで自分を見つめるコナンに快斗は数瞬の間目を見開いた。

「名探偵。」
「『キッド』が狙われてる今、お前にはこっち側にいてくれないと困るからな。」
その言葉に瞠目すると、フッと息を吐き、快斗は微笑して応える。

「わかった。」
そう言って快斗は立ち上がった。
そんな快斗を見てコナンが笑みを浮かべる。

「それじゃ、行こうか。」
「ああ。」
応えた快斗にコナンは頷くと、その場から踵を返し歩き始める。
快斗は、コナンの小さな背中に目を細めつつ、数歩後ろを歩き始めた。

そうして二人は、優作と有希子、そして、昴が待つ工藤邸のリビングへと向かったのだった。