新年第一弾で『キス』http://ameblo.jp/yo-ko081008/page-5.htmlというタイトルで平和の甘いお話を公開されたyo-ko081008http://profile.ameba.jp/yo-ko081008/にこのお話のステキなシチュエーションをお借りして快青に続いて新蘭で甘いお話を書かせていただきました。
ぜひ快青バージョンhttp://ameblo.jp/infinity20021008/entry-12234711063.htmlと合わせてお楽しみください♪
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「なんか腹減らねーか?」
「うん。今日はお父さん出かけるって言ってたから、ポアロでも寄ってく?」
「そうだな。久しぶりに行ってみるか。」
そう言って笑う新一の顔を見ながら思わず笑みが零れる。
新一が戻って来て約二カ月。
その間、日々は驚くほど平凡に過ぎていって。
そんなごく当たり前の日々に幸せを感じていた、ある日の事。
担任の先生から授業で使った教材を準備室に戻す様に頼まれて、それを新一と二人で戻しに行き、後はもう帰るだけ・・・という、そんな時だった。
準備室を出て歩き出そうとしたその瞬間「やべっ・・・。」と呟いた新一に私は強引に準備室に押し戻される。
「何っ?」
驚いて声を上げた私の口を新一が掌で強く抑えて「シッ・・・黙ってろ!!」ってまっすぐ立てた人差し指を自分の唇に押しつけて言った。
わけがわからなくて首を傾げていたけど、その直後廊下の方からバタバタと通り過ぎていく足音と共に女の子たちの声がしてきた。
その声で納得した私は思わず横目で新一を軽く睨む様な視線を向けてしまう。
別に新一が悪いわけじゃない。
それはわかってるんだけど・・・。
元々高校生探偵として人気があった新一だけど、復学してからは以前よりも性格的に穏やかさと深みが増して、そんなところが益々女の子たちの人気を押し上げていた。
そして、新一が戻ってきたその日に、あのロンドンでの告白の答えを伝えて晴れて恋人としてつき合い始めた私達だけど、やっぱり私も新一も人前で触れ合う事にはまだ慣れてないから、私達がつき合っている事自体気づかない子も多いらしくて、相変わらずの告白ラッシュ。
その度に、私の存在を理由に新一が断ってくれている事も知ってる。
だけど・・・。
「あれ?確かこっちの方に行ったと思ったんだけど。」
「今日こそ捕まえようと思ったのに!!」
そう言って悔しそうに呟く女の子達の声に、外を窺う新一が深い溜息を吐き出す。
(何でわざわざ逃げるのよ?)
私は心の中でそう呟く。
新一にしてみたら追いかけられるのは日常茶飯事で、それこそ中学の時からそういう事も多かったから、なんだかんだ言ってあしらい方も上手い。
それに、何より私がいるんだからちゃんと目の前で断ってくれればいいのに。
そうちょっと、不安と不満がごちゃまぜになった想いがこみ上げてきてもう一度新一の顔を見上げた。
その時だった。
そんな私の心の声を見透かしてたみたいに新一が扉の外の気配に神経を研ぎ澄ませながら話し始める。
「あいつら、ホント・・・どうにかしてくれよ。」
そう溜息混じりに吐き出した新一の声に私が目元を緩めるのを見計らって新一が耳元で「実はな・・・。」と言って話し始める。
つい先日、廊下を歩いている時に目の前から歩いてきた女の子達が新一の顔をチラチラ見ながら話しているのが気になって、新一はその子達の唇の動きを読み取っていたらしい。
そうして、読み取った内容から得た情報が、ある積極的なグループの子達がそのグループ内で賭けを始めたらしいって事。
そこまで言って気まずそうに黙り込んでしまった新一に私はたずねた。
「賭けってどんな事??」
そうたずねるとますます気まずそうにして視線を逸らしながら新一が呟く。
「蘭には言いたくねぇ・・・。」
そんな事言われてしまったら益々気になるってわかってるはずなのに。
心の中でそう思いながら、私はもう一歩前に踏み出して新一との距離を詰めると言った。
「教えて。」
そう強い口調で言った私に溜息を吐き出すと、新一は少しだけ唇を尖らせながら言った。
「ぜってぇ引いたりとかすんじゃねぇぞ!!」
その言葉に私は頷く。
新一がそこまで言うのだから何かある。
それ位の事は私にだってわかる。
そんな新一に出来る事は、その言葉をそのまま受け止める事だけだから。
そんな私の耳元に顔を寄せて新一が囁く様に言った。
「俺とキスした奴が勝ち・・・。」
そんな思いもよらない言葉に、私は「へっ・・・?」と一瞬声をもらす。
その時だった。
もう一度口を新一の掌で塞がれた。
それとほぼ同時に準備室の前を女の子達の声と足音が通り過ぎていく。
やっぱり、さすが探偵。
見えない壁の向こう側でも、人の気配を探る事にかけては人並み外れているんだ・・・と、その時全く関係ない事を思っていたりもした。
「蘭。」
そんな時に、そう名前を呼ばれた。
「何?」
私が応えると、新一が私の目を真正面からまっすぐ見つめているのが薄暗い空間の中でもわかった。
私は思わず緊張してしまって問い返した後、何も言えなくなってしまう。
「俺、キスするのは蘭以外考えられねぇから。」
そんな事を突然言われて、私は思わず顔に火がついたみたいに熱を持ってその場で体温が⒉、3度上がった気がした。
「何言ってるの!?こんな時に・・・!!」
そう言って俯く私の頬に新一が手を伸ばすと、そのまま新一の顔が近づいてきて、唇が重なった。
私はその瞬間だけでめまいがしそうになってたのに、更に新一は啄む様にして口づけをすると、今度は角度を変えながらさらに深い口づけをして私の声も息もすべて閉じ込めてしまった。
そうして私は初めてだというのに、閉じ込められた唇からもれる自分の喘ぎ声とか、息が出来ない苦しさとか、それ以上に心臓が跳ね上がって飛び上がってそのままホントにめまいがして倒れてしまうんじゃないかと思って。
そんな私に構わずに新一は私の髪を梳く様に撫でては私の額や頬にまで何度も何度もキスしてきて。
そうして再び唇を塞ぐと、先ほどよりも深いキスを求めてきて、息の仕方もわからない私はそのまま本当に窒息してしまうんじゃないかと思った。
それで、途中で苦しくなってむせてしまい、そんな私を見てやっといつも通りに戻った新一が「大丈夫か?」とたずねてきた。
「大丈夫なわけないでしょ!!」と私は思わず顔を真っ赤にして言い返していた。
その時だった。
「あれ?どこかで声しない?」
そう先ほどの女の子達の声が聞こえた。
咄嗟に私の姿を隠す様に覆いかぶさった新一。
ガチャンと扉が開く音と共に、薄暗い準備室に外からの光が差し込むと、新一はもう一度私にキスをしてチラリと後ろを振り向く。
開いた扉の向こう側の女の子と一瞬だけ唇を重ねたままの新一が顔を見合わせて「あ・・・、ゴメンナサイ!!」という声と共に扉が閉まる音が聞こえてきたのはほぼ同時。
そうして、バタバタという足音は今度こそハッキリと遠ざかって行くと、新一は顔を上げてふぅ~と深く息を吐き出して、申し訳なさそうに私を見つめて言った。
「わりぃ、つい・・・。」
そう呟く新一に私も少しだけモジモジしながらも笑みを返す。
「良いよ、ちょっとびっくりしたけど。でも・・・、嬉しかった。」
そう答えた私に新一が目を見開く。
そんな新一を見ながら私は新一が帰ってきたあの日の事を思い出しながら言った。
「伝えたでしょ?あの時。ロンドンの新一の告白の答え。私も同じ気持ちだったって。だから・・・、ずっと待ってたし・・・。」
そう言いながら言ってる自分が恥ずかしくなってきて私はその場で顔が真っ赤に染まるのを感じながらどうして良いかわからずに足元に視線を向ける。
そうしていると、新一が手を伸ばすと私を強く抱き締め、叫ぶ様にして言った。
「もう一度だけ言っとくからな!!何度も言わねぇから良く聞いとけよ。」
そんなエラそうな言葉とは裏腹に、新一は目を細めて優しく私を見つめる。
「蘭が好きだ。他の奴らになんと言われようと、俺は蘭しか欲しいと思わねぇし、キスしたいとも思わねぇから。オメーも堂々と俺の隣で笑ってろ。いいな!!」
そうしてフッと笑みを浮かべる新一に自然に私の口元にも笑みが零れる。
こんなエラそうな告白なのに・・・。
心の中でそう思いながらも。
やっぱり、私は新一が好きなんだ・・・と。
新一の笑う顔を見ながら、私は改めてそう強く感じていた。