他の解答例などと合わせて、ご参考までに。

 

東大 過去問 2024年 吉田 解答例(模範解答)

 

第一問

小川さやか「時間を与えあう――商業経済と人間経済の連関を築く「負債」をめぐって」

①得意客の確保や維持、支払時の追加購入、販売数増加による仕入れの優遇が見込めると共に、ツケは切迫時に回収する余剰金となりうるから。

②具体的期限は決まっていないため、数年未払いでも不履行とは言い切れず、借り手が生活の余裕ができたと思えば支払われると信じているから。

③商売上は代金未払いでも、ツケを認める配慮に対し、ご馳走などの返礼があれば、贈与関係は成立し、生活を支え合う関係性が築かれていること。

④タンザニアの行商人は、誇張を交えつつ生活の苦しさを訴える客にツケを認めるが、このとき、市場経済の売買契約とは別に、行商人が事情を汲んで時間の猶予を認める一方、その配慮に客が返礼を行う贈与の関係が生じ、二者に信頼関係が醸成されるということ。

⑤曖昧 憤り 拘泥

 

第二問「讃岐典侍日記」

★①長年、宮仕えをしなさる(あなたの)お心のめったにない素晴らしさ

慕わしく(お会いしてみたく)思い申し上げるが 

このようにして(このような悩みによって)自分の心が原因で弱っていきなさいよ

★②筆者がお声がけを待ち構えていたかのように急いで出仕したら見苦しいこと。

③気乗りしない出仕を断るべく、何か口実を見付けて出家したいということ。

④出仕したとしても、先帝が恋しい筆者は、今の帝に対し不熱心に見えるから。

★⑤自分の喪服を先帝の形見だと思うと、その袖が絶えず濡れるほど泣けてしまう。

 

第三問 「書林揚觶」

★①一時的に痛快さ(満足、快楽)を得ることを

丘や山のように大きな利益 

意見が偏っていると言っても

★②わざわざ本を書いて意見を述べるのは、強く言うべき意見を持っているからであるということ。

③四季の寒暖や昼夜の時間の巡りのように、日常的で疑いないありかた。

★④近年の本には、独自の主張がなく、昔の人の言葉を盗用しているだけで、価値がないということ。

 

第四問 菅原百合絵「クレリエール」

①外国語で作品鑑賞や表現を行うときの違和感は語学の熟練につれ減っていくが、決して母語のような自然さには到達しえないということ。

②母語に存在しない概念の外国語の表現を知ることによって、何気なく見ていた情景に新たな意味付けが与えられるようになるということ。

③よそよそしい外国語で悩みを語るとき、母語の思考では封じられがちな、己の弱さを含む、本質的な課題分析が言語化されることがあること。

④生活の多くを占める母語の時間には隠れている人格は認めたくない欠点も含むが、自分の深層を知り、受け入れる経験には喜びがあるから。

 

※これは国語講師・吉田裕子が個人的に作成したもので、出講先の組織的な見解ではありません。