慶應義塾大学 法学部 2021年 小論文(福田恒存)の要約部分(400字目安)の解答例です。

 

本来、政治と文学は役割が異なる。善き政治は社会の多数を救うことを目指しつつも、その限界を自覚し、その救い得ない少数の救済を文学に期待する。文学は少数者の苦痛を徹底的に捉えようとすることで、全人間を見つめる。悪しき政治は、そうした文学者にも多数派に照準を合わせるよう強制したり、己が抱えるべき多数者を救いきれずに文学に押し付けたりする。

政治と文学の対立は、社会と個人の対立と通じる。戦後の日本では、思想の左右を問わず、大義名分を抱えて社会を優先しており、それに抗議する個人は反動・時代錯誤のレッテルを貼られ、抹殺されようとしている。その結果、表向きこそ社会正義という観念が支配的になっているが、実態としてエゴイズムが蔓延している。

政治と文学は互いの存在を是認・尊重しつつ、各々の役割を全うすることが重要である。(354字)



※これは国語講師・吉田裕子が個人的に作成したもので、出講先の組織的な見解ではありません。