平安時代後期の物語文学『堤中納言物語』に収められている「はいずみ」という短編のワンシーンを描きました。
* * 「はいずみ」のあらすじ * *
男は長年、妻と同居していたものの、お世話になっている人を頻繁に訪ねるうち、その娘と懇意になります。
その新しい妻と同居しようと考え、元の妻を追い出すことにしますが、彼女の引っ越し先を訪ねてみると、あまりのみすぼらしさで、気の毒になってしまいます。男は考え直し、彼女を家に連れて帰り、新しい妻との同居を断ります。
ある日、男は不意に新しい妻を訪ねます。しかし、急な訪問に慌てたその女は、はいずみ(眉墨)を白粉と間違えて、顔に塗ってしまうのでした。新しい妻の黒い顔を見て呆れた男は、元の妻の待つ自宅に戻ります。
男の帰宅を残念がる新しい妻の両親がやってくると、娘の黒い顔にびっくり。はいずみを塗った自覚のない本人も、鏡を見て、何事かと大騒ぎします。治療をしようと陰陽師を呼ぼうとしたところ、涙で化粧が落ちて、新しい妻は元通りの顔に戻ったのでした。
* * * * * *
後半はコメディになりますが、途中までの話の構造は、『伊勢物語』23段の「筒井筒」や『大和物語』149段に似ていますね。
出典の『堤中納言物語』は短編集で、風の谷のナウシカの着想のもととされる「虫愛づる姫君」という話が有名です。
吉田裕子の公開講座
- 朝日カルチャーセンター新宿【季語で味わう日本文化】2020.2.8(土)13:00-14:30
- 毎日文化センター東京(竹橋)【古典の女流日記文学で読む女心】第2水曜10:30-12:00
- ひばりが丘カルチャーセンター【古典の物語を楽しむ】第2火曜10:15-11:45
- NHK学園 市川オープンスクール(千葉県)【徒然エッセイ教室】第1火曜13:30-15:00
- NHK学園 市川オープンスクール(千葉県)【もういちど、古典文学】第2・第4金曜13:15-15:15
取材・執筆・講演など、仕事のご依頼は吉田裕子公式ウェブサイトまで。
twitter・吉祥寺古典を読む会twitter・noteも開設しています!