歌舞伎座、八月納涼歌舞伎の千龝楽 第3部にお邪魔することができました。

 
タモリさんが発案、鶴瓶さんが落語で演じたお話がお芝居になった「廓噺山名屋浦里(さとのうわさやまなやうらざと)。この新作が観たくて、今月2度目の第3部でした。
 
現代にも通じる、社会の世知辛さを感じつつも、そんな世を、心奥に誠をもって生きていこうとする人たちの絆に心が温まる。良いお話でございました。
 
中村勘九郎さん演じる、勤勉実直なお侍。
中村七之助さん演じる、松の太夫としての風格と、清らかな可愛らしさの二面を持った花魁 浦里。
坂東彌十郎さん演じる、嫌〜な感じのお侍。
中村扇雀さん演じる、やり手の遊女屋店主。
駿河太郎さん演じる、元気で涙もろい手代。
それ以外のどのお役も、それぞれの役者さんの雰囲気によく合っていました。
 

山名屋が中庭まで作り込まれていたことなど、舞台美術も素晴らしくて……。川辺での花火見物の風情を味わえたのも楽しかったですし、最後の花魁道中、葛飾応為の絵のような夜の吉原の風情は忘れられません。

 
実に生き生きとした舞台でした。
 
28日は、千龝楽だったからか、定式幕が引かれた後、拍手がいつまでも鳴り止みませんでした。
 
そして、幕が開いたのです! まさかの歌舞伎座でのカーテンコール。
 
1階席でお芝居をご覧だったタモリさんと鶴瓶さん舞台に上がりました。タモリさんが、このエピソードの発掘者、それを聞いて落語にしたのが鶴瓶さん。おふたりは役者陣と握手をし、落語や歌舞伎ができるまでのいきさつをお話しくださいました。
 
私はある時期まで、カーテンコールというものがあまり好きではありませんでした。別にお客さんはたいして感動していないのに、流れ的にやるスタンディングオベーションとか、何なんだろうと思っていました。こんなカーテンコールは要らないから早く帰りたいと思ったことも何度かありました。
 
今回のカーテンコールはそういうカーテンコールではありませんでした。
 
役者さんに、作り手の一人ひとりに、
「本当に、こんな作品をつくってくださってありがとうございます!!」
と伝えずにはいられなくて拍手をする。それじゃ足りない気がしてスタンディングオベーションをする。それを役者さん達が受け止めてくれる……。そういう幸せなカーテンコールの時間を体験させてもらいました。
 
「万雷の拍手」という言葉の意味を体感できた気がします。「あたたかい拍手」の意味も。本当に良いお芝居だったから、拍手をしていたという感じでね。カーテンコールを要求するような手拍子ではなくて、ただただ感謝の拍手でした。
 
ちなみに、今回、タモリさん・鶴瓶さんと比較的近くの席で観ていたのですが、幕引き後、おふたりが他の観客の皆さん同様、ずっとずっと拍手を送りなさっていたんです! 周囲のおふたりに気付いたお客さんは、舞台はもちろん、山名屋浦里の生みの親のおふたりに向けて拍手をしていたように思います。幸せな空間でした。
 
山名屋浦里の初演を観たこと、一生の自慢です。
 
中村屋!!!!