
■2003年創刊、読者数約12万人のメルマガ「スーパー広報術」に連載している
【吉田裕子の「想いの伝わる教育広報事例」】 より
大学や高校・中学、NPOなど、
企業以上に広報の占める役割が大きい「教育機関」に注目し、
事例を取り上げながら、
「自分たちの想いが伝わり、長期的なファンが増える広報」
のポイントを探っていく連載の第11回です

2013年4月、青山学院大学の人文・社会科学系学部の
キャンパスが渋谷に一本化されます。
東洋大学・國學院大学なども
都心のキャンパスに学部を集中させる動きを見せており、
大学の都心回帰が進んでいると言えます。
そんな中、秋田県の森の中にある単科大学ながら、
全国的に注目を集め、入試日程によっては
東京大学・京都大学に匹敵する偏差値を叩き出している
公立大学があります。
2004年に開学した国際教養大学です。

世間の大学生が就職活動に苦労する中、
(2012年春の四年制大学卒業者の就職率は60.8%)、
同大学の就職率は100%を誇っています。
このことは、就職氷河期のニュースと共に
多くのメディアを飾り、関心を集めました。
ただ、同大学の学生が置かれている状況を考えてみると、
一般的に、就職活動に不利だとされる条件が多いのです。
たとえば、東京・大阪などでしか、
面接・インターンを行わない企業が多いので、
地方の大学生は、就職活動で不利になりやすいと言われています。
また、インターン参加・OB訪問などの準備期間も含めると、
就職活動は、三年夏~四年春に行うものですが、
同大学では、この時期に学生は留学しているのです。
そんなビハインドをものともせず、
高い就職率を継続できているのは、
何と、大手企業の採用担当者が、
わざわざ秋田の同大学まで出向いて
リクルーティング活動を行うからなんです。
卒業生は、それだけ価値ある人材として評価されている訳です。

国際教養大学については、
教育理念や具体的な教育の方法なども、
さまざまなメディアで取り上げられています。
例えば、同大学の理事長・学長を務めているのは、
東京外国語大学の学長など要職を歴任した中嶋嶺雄さんです。
彼の、確固たる信念に基づく強力なリーダーシップは、
経営者向けの雑誌などで取り上げられています。
学歴革命 秋田発 国際教養大学の挑戦/ベストセラーズ

なぜ、国際教養大学で人材は育つのか (祥伝社黄金文庫)/祥伝社

また、同大学の学生は全員、
卒業に必要な単位の1年分を、
海外の大学に留学して取得することを義務付けられています。
「日本の若者の内向き志向」が叫ばれる中、
必ず海外に出す、
しかも、短期の語学留学ではなく、
現地の授業でしっかりと単位を取ることを
義務付ける方針は注目されています。
それを支えるのは、徹底的な英語教育です。
留学時にはTOEFL550を必須としていなすし、
同大学では、専任教員の半数以上が外国人で、
全ての授業が英語で行われます。
(1クラス15人前後の少人数授業なので、受け身の姿勢は許されません。)
さらに、新入生には1年間の寮生活で、
留学生とルームシェアをすることが義務付けられており、
学生は公私ともども英語漬けの環境となるわけです。
これは、社内公用語を英語にする企業が増える中、
注目すべき取り組みと言えるでしょう。

なお、大学全入時代にあって、
学生の人気取りや時代の流行への迎合に走る大学が多い中、
同大学を「四年間で卒業できる学生はわずか50%」です。
日本の大学には珍しい、厳しく学生を鍛える教育が、
ゆとり教育の是非や、
日本の大学と海外の大学との比較の文脈の中で
注目されることもあります。

理念と実践が強く結びつき、
確かな成果を出した国際教養大学。
本業に真摯に取り組むこと、
そして、時流やそれぞれのメディアのニーズに応じて発信する広報。
教育機関のみならず、学ぶところの多い事例だと思います。