スーパー広報術
■2003年創刊、読者数約12万人のメルマガ「スーパー広報術」に連載している
【吉田裕子の「想いの伝わる教育広報事例」】 より




当事者が想いを熱く語る書籍の良さもさることながら、
説得力の意味で上を行くのは、
綿密な取材をもとに、第三者の視点で書かれた本でしょう。


  


東京大学・早稲田大学・慶應義塾大学などは、
大学側が多くを語らずとも、勝手に紹介本が出ますし、
各界で活躍する卒業生が自著の中で大学生活に言及することもあります。
そうした書籍が大学の更なるブランディングに繋がっています。

(慶大の場合は、『学問のすゝめ』をはじめとする福澤諭吉先生の書籍が、
 最高のブランディングアイテムになっているのですが、
 それは、目指して到達しうる領域ではないので、また別の話として…。)




 


西の名門校・灘も、
『灘校 なぜ「日本一」であり続けるのか』など、
第三者の書いた本の多い学校です。


その中でも近年特に注目を集め、
幅広い世代が灘の教育に興味を持つキッカケとなった書籍が、
『奇跡の教室 エチ先生と銀の匙の子どもたち』(小学館)です。


奇跡の教室 エチ先生と『銀の匙』の子どもたち/伊藤 氏貴



これは、元同校教諭・橋本武さんの
特徴ある国語教育について紹介した本。

中1から中3までの3年間、
文庫本『銀の匙』しか扱わない、その授業では、
様々な関連事項を調べ、五感で体験していきます。


銀の匙 (岩波文庫)/中 勘助



こうしたスローリーディングでこそ、
生徒の個性や能力が大いに磨かれるというメッセージは、
大いに親世代の共感を呼びました。



都会の中高一貫校が、
安定した合格実績のために、
詰め込み教育で子どもを締め付けがちな中にあって、
灘の全国トップレベルの合格実績が、
こうした自由闊達な教育に支えられていたという事実は、
一般の予想に反することであり、
それまで灘をよく知らなかった人達には
強烈なインパクトを与えたのでした。


もともと関西で強く支持されていた同校ですが、
これにより、ますます全国的にファンを増やしたことは、
間違いないでしょう。


灘校・伝説の国語授業 本物の思考力が身につくスロ-リ-ディング/橋本 武


伝説の灘校教師が教える 一生役立つ 学ぶ力/橋本 武


〈銀の匙〉の国語授業 (岩波ジュニア新書)/橋本 武




なお、教育の工夫を当人が語ると、
どうしても手前味噌の武勇伝だと受け取られがち。

この後、橋本さん本人も『銀の匙』教育についての本を書いていますが、
まず最初にドキュメンタリー本があり、
後から当事者自身による本が出るこの流れは、
実に理想的だったと言えるでしょう。