スーパー広報術
■2003年創刊、読者数約12万人のメルマガ「スーパー広報術」に連載している
【吉田裕子の「想いの伝わる教育広報事例」】 より



大学や高校・中学、NPOなど、
企業以上に広報の占める役割が大きい「教育機関」に注目し、
事例を取り上げながら、

「自分たちの想いが伝わり、長期的なファンが増える広報」

のポイントを探っていく連載の第7回です。


就職活動に明け暮れる大学生


整った黒髪に、リクルートスーツ。
就職活動に明け暮れる大学生の姿が目に付く時期ですね。


2013年度の新卒採用については、岩波書店が
「岩波書店著者もしくは岩波書店社員の紹介」
を応募条件としたことが話題になりました。

採用人数が少ない割に多数の応募が集まってしまう。
そんな事態に対する苦慮の策だったようですが、
「コネ採用ではないか」と、非難の声も上がりました。


岩波書店著者もしくは岩波書店社員の紹介


ファーストリテイリングは、新卒・中途を問わない通年採用を始め、
大学1年生から採用活動の対象とするようになりました。

日本人学生よりも、中国などの海外学生を優先して採用する企業も出てきており、
いずれも就活生の枠を超えて、話題となっています。



各企業とも、自社の求める人柄・能力の学生を集めるべく、
採用方法に知恵をしぼる訳ですが、
それが結果としてマスコミの注目を集め、
企業の理念やあり方を伝える広報活動にもなることがありうる訳です。



入学試験も一種の広報活動



教育機関で言うなら、
入学試験に、自校の教育理念を反映させることで、
受験生・保護者、そして社会に
メッセージを発信する学校が存在しています。

入学試験も一種の広報活動なのですね。



日本一注目が集まるだけに、
その内容が社会に波紋を投げ掛けるのが、
東京大学の入学試験問題です。


2002年から施行された「ゆとり教育」が社会全体の関心事であった2003年2月、
東京大学が出題した数学の問題が話題となりました。

円周率πは、3.05より大きいことを証明せよ。


「ゆとり教育」による教育内容の変更で、
最もセンセーショナルに報じられたのが

「円周率を3として取り扱う」

ということであったかと思いますが、
そんなとき、東京大学が出題した問題が、

「円周率πは、3.05より大きいことを証明せよ。」

だったのです。


出題の真意は明かされていませんが、
「東京大学のゆとり教育に対する批判ではないか」
と注目され、教育業界を越えて広く注目を集めることになりました。


東京大学



中学入試においても、かねてから試験にこめられたメッセージが注目され、
受験生・保護者から広く注目を集めると共に、
自校に適した生徒を集めることに成功している学校があります。

男子御三家の1つ、私立武蔵中学です。


その自由な校風で知られる武蔵中は、
建学の精神の1つに「自ら調べ自ら考える力ある人物」を挙げていますが、
理科の試験問題に、その思想を体現した出題があります。


通称「お土産問題」

糸巻きやコンセントなどを配布し、
受験生はそれらを観察して
気が付いたことや考えたことを論述するのです。

試験終了後は、配られたものを持ち帰っていいことから、
「お土産問題」と呼ばれています。


私立武蔵中学



こうした出題の中身の工夫だけでなく、
選抜方法にも工夫のある学校があります。


例えば、東京工業大学は、
国際科学オリンピック出場者や
高校までに科学的研究を行った生徒などを
対象とする推薦入試を導入しています。


これらの取り組みは、
受験生だけでなく、
社会に対するメッセージとなり、
学校のブランディングに繋がります。

人材の入り口である募集・選抜を、
その組織の姿勢や理念を伝える広報活動の一環として、
工夫していきたいものです。