『国をつくるという仕事』
(西水美恵子、英治出版)
を読みました。






都立西高校在学中に渡米し、
そのままアメリカの大学へ進学、
ジョンズ・ホプキンス大学大学院で博士号(経済学)を取り、
プリンストン大学の助教授として、
学問界に身を置いていた西水さん。

サバティカル(研究休暇)を
世界銀行の経済開発研究所で過ごす中で、
エジプトを訪問します。

エジプトの貧民街で、
”栄養失調の幼な子が自分の腕の中で息絶える”
という体験をして、
学問の世界を飛び出し、
世銀に移って苛酷な現実と戦う決意をしたのでした。



本書は、
草の根を歩いて実態を把握することを重んじ、
本部主導だった世銀の改革に努め、
最終的に、南アジア地域の副総裁として活躍された西水さんの、
草の根の声の記録。

そして、
時に、偉大な模範であり、
時に、反面教師である、
各国のリーダー達との応酬や交流の記録です。



例えば、マンモハン・シン氏とムシャラフ氏については、

”草の根を自分の足で歩き、
権力者を恐れる人々の心を開き、
自分の目と耳と肌で彼らの夢と苦しみを学ぶ。
それが自然にできる人であり、
また、そうする時間を
多忙なスケジュールから練り出す努力を
惜しまない人だ。”

と紹介されています。



我われ一人ひとりの読者が
彼らの人柄に感銘を受け
自身の在り方を考える
というインパクトがあるのはもちろんのこと、、、

権力者による親族優遇や賄賂、搾取が横行する地域にも
より良い国の未来を真剣に考え行動するリーダーが
確かに存在しているのだ

という事実を伝える具体的描写は、
真摯な援助を目指す国際機関やNGOに、
勇気を与えるのではないでしょうか。






もちろん…

腐敗した政治が援助を無意味化するのと同じように、
自己顕示欲や名誉欲に基づいた援助が、
地域に迷惑をかけることもあります。

自身の属した世銀も含め、
援助界の問題も、
西水さんは鋭く指摘します。


”地震、台風、大洪水や干ばつと、
南アジアは自然災害の多い地域だった。
災害からの立ち直りを助ける援助活動には心労が多い。

緊急時の活動は目立つ。
顔が見える。
金が集まる。
名声や昇進欲をくすぐる。

公私共々、援助機関の悪質な競争を誘う。

緊急事態を口実に草の根を無視し、
民の意を汲まない活動が許されやすい。


被害国の人々がするべきことまで、
援助機関の人間が立ち入りたがる。”





さて、、、

ここまでの文章でも十二分に伝わるかと思いますが、
情熱がほとばしる西水さんの文章が、
本書の魅力のひとつです^^


(改革)開始から半年たらずで視察に回ったときほど、
楽しい旅はなかった。

喜び勇む人々の情熱を、肌に感じた。

「診療所に行けなくても、お医者様が回診に来てくれる。夢のようだ」
と言う女衆に泣かされ、
嬉々として通学する子供たちをにこにこ見送る親の姿に、
民主制かくあるべし、
とまた泣いて…”






最後に、
彼女自身が体現する、
求められるリーダー像とその育成について引用します。



”国づくりは人づくり。
その人づくりの要は、
人間誰にでもあるリーダーシップ精神を引き出し、
開花することに尽きると思う。

未来の社長や首相を発掘せよなどというのではない。
育児や家事に勤しんでも、
家庭の外に出てどのような職に就いても、
リーダーの仕事には夢と情熱と信念がある。

頭とハートが繋がっているから、
為すことが光る。
心に訴えるものがあるから、
まわりの人々にやる気と勇気をもたらす。”



国をつくるという仕事/西水 美恵子