君に伝えておきたい事が ねぇあるよ
楽しい瞬間は 誰とでも分かち合える
だけど辛く悲しい瞬間には そうそう
他の誰かなんかじゃ 埋められない

  浜崎あゆみ【UNITE!】



夫婦や家族という枠組みについて、
また、人と人との絆について、
色々なことを考える映画でした。


宮沢りえの演じるトヨが、
不器用な旦那を裏で支える健気な妻でありながら、
いざとなると、凛とした強さと優しさを持つ素敵な女性で、
すごく魅力的でした。


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”オリヲン座”は夫婦で営む西陣の町の小さな映画館。
ある日、そこに、戦争で親を亡くした貧しい青年トメキチが、
働かせてくれ、とやってくる。

盆も正月もない映画館で、トメキチが働き始めて、3年後、
煙草で肺を患った主人がこの世を去る。

失意に沈むトヨは、オリヲン座を閉めようと言うが、
トメキチは、オリヲン座をほかすな、という、主人との約束から、
オリヲン座を続けることを提案する。

しかし、テレビの出現による映画衰退に加え、
未亡人トヨが、すぐに若いトメキチを誘惑したという、
不貞の悪評が立ったことで客足が遠のいてしまう。
二人は貧乏と噂に耐えながら、
オリヲン座を守り抜いていく。

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トメキチとトヨは、
美しい未亡人と年下の彼という、
【めぞん一刻】的なシチュエーションなんだけど、
辛いのは、前の主人が町の皆に慕われた人だけに、
本人の良心だけでなく、
周囲も、トメキチを愛することを非難し、
ふたりが孤立無援になってしまうこと。

トメキチにとっても、父のように世話になった恩人の奥さんだし、
自分との関係はトヨの、そして、オリヲン座の評判を
下げることになるわけで、
決して踏み越えられないラインがあっただろう。


厳しい境遇を二人で生き抜いたからこそ、の、
深い信頼関係はあったと思うけれど、
それでも、なお、淋しいものはあっただろうと思う。

最後(最期)に、ようやく、
愛の告白をハッキリと口にできたトヨキチに、
トヨは”幸せ、もう死んでも良い”とつぶやくけれど、
こんなにずっしりと響く、
切ない愛の告白はなかなかないと思う。