音楽だけを愛した孤独なピアノ教師は
刑務所という非日常で1人の少女と対峙する、
そう、女は信念を持て。    夏木マリ


暗い過去をもったピアノ教師と
受刑者の生徒の魂のぶつかりあいは、
生命の叫びを聴くようである。
主人公達のその後が気になるが、
ラストのピアノ演奏は圧巻である。

             美内すずえ (漫画家)



そんなに洋画を見たことがない私も、
何となく「これはいかにもドイツ映画だ」と感じる、
陰鬱で、哲学的で、少し難解な作品。

とっても、尾崎豊、的。


靄がとけていけばいくほど、
登場人物が抱える孤独や絶望の深さが、
鮮明に、こちらにも伝染する。


重たい。

とっても重たい。



ところで、ほぼ日で、糸井重里 が、
最近の日本では、恋愛は健全で健康な社会のシンボルに
なりつつあると書いていた。
セカチューを挙げるまでもなく、
病気や事故といった敵に二人が愛で立ち向かう、
”泣ける純愛映画”のブームである。

でも、彼は続けて、言う。
恋は”濃い”であり、魔であり狂である、と。


情念系の椎名林檎やCocco、中島みゆきを愛する私は、
間違いなく恋や愛とはそういうものだと思う。


この映画を見ながら、改めて、
そのことを思い出す。

人と人との繋がりって優しいもんだけじゃない。
人を信じたい想いと、
裏切られる孤独の恐怖と、
その狭間で感情を乱高下させながら、
生きていく、不器用なタイプの人間もいる。


ジェニーも、クリューガーも、
そういう人間。



重たい。

でも、見て良かったと思う。

皆があまりに書くから斜に構えてラストを待っていた私も、
ラストの4分間には胸を打たれた。



あの4分間、彼女は欲しいものを手に入れた。

彼女の使命、生きる意味であるピアノを思う存分弾く自由、
体も心も傷付け合ったクリューガーとの絆。

だから、彼女は、笑った。


その1秒後に手錠にかけられることが分かっていても、
彼女は、笑った。



私にも、そんな瞬間が来るだろうか?

私の使命を全うし、あんなに輝ける時間があるだろうか?

私の使命は何なんだろうか?