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『放浪息子/志村貴子 著』全15巻
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今回は「キャラクター」ついて語っていきたいと思います。
※ネタバレを多く含みますので未読の方はご注意ください
【内容紹介】
女の子になりたい少年・二鳥修一と、男の子になりたい少女・高槻よしの。誰にも言えないこの気持ち…。思春期手前の子供たちの揺れる心情を描く話題作。
【多彩なキャラクター】
- ●二鳥修一(女の子になりたい男の子)●
物語開始時点で小学5年で最終的には高校も卒業します。
主人公。ルックスは非常に優れていて、女装姿はとても可愛らしい。
本編で積極的に女性装をしているのでトランスベスタイト(異性装者)なのかと思っていたら、「将来は女の子になりたい」と言ってるのでトランスジェンダー(性別移行者)な要素かと思ったら、声変わりなどの第二次性徴に恐怖したり、男っぽくなる身体を嫌がったり、どことなく性同一性障害の性別違和にも似てたり……。
- ここらへんは下世話になってくるので、野暮と言うものですね。
- 私自身、性別違和を抱えていたので、初めの頃は共感と言うか、自分と二鳥くんを重ねてた部分もあったんですが、後半になるにつれ、性別に対する向き合い方も考え方もまるで違うなと思いました。
一種の『ゆらぎ』を迎えてるかも知れないけど、作品の中で一番どの枠にもハマってない子だと思います。そんな揺れ動き方も二鳥くんの魅力なのかもしれません。
●高槻よしの(男の子になりたい女の子)●
物語開始時点で小学5年で二鳥くんの同級生ですね。
- もうひとりの主人公。背の高いハンサム系(好青年?)だけど徐々に女性的な一面も覗かせます。
「男の子に産んでくれなかった」と親を恨んだり、膨らむ胸を補正下着でつぶしたりと、その性違和な感じから割と典型的な性同一性障害かと思いきや、女性モデルになることに憧れたりする描写があったりするし、可愛い格好させたがる親への反発的なニュアンスから、クロスドレッサーと呼ばれる異性装者(男装)に近いと思ったり。
- ここらへんは下世話になってくるので、野暮と言うものですね。
- 二鳥くん同様に『ゆらぎ』もあるかもなので、二鳥くん並みに枠にハマりにくい子。ひょっとしたら二鳥くん以上に枠にはまってなさそうで、はまってるような、そんな子。
- ●有賀誠(女の子になりたい男の子)●
3巻で小学6年で二鳥くんの同級生で友だち。
二鳥くんと違って容姿が可愛らしくないことにコンプレックスを抱いていて「男の人が好きだから女の子になりたい」とはっきりとした意思を思ってる。
思考や発想も男性キャラクターでは一番女性的な……というより乙女な感じで、性別と言うことに関しては一番はっきり向き合ってるイメージですね。
主人公の2人がふわふわしてる分、こういうハッキリとしたキャラがいるとストーリーが引き締まる気がします。
●更科千鶴(女の子)●
5巻で中学1年で二鳥くんたちの中学からの同級生。
高槻さんたちと同学年で友だち。長身長髪の美人系で自他共に認める変わり者。入学式に女子でありながら、セーラー服ではなく学ランを着てきて話題をさらっています。
本人は「男の子になりたいという願望を全くない」と言ってることから、遊び(趣味?)の範囲での男装のような感じで普段から男装してるワケではなくあくまで「そういう気分」の時だけらしい。
異性装とか、そういう以前にボーイッシュファッションの延長線上と言う感じだと思います。
彼女のその思いつきに任せた突拍子もない行動に、二鳥くんや高槻さんは軽く振りまわされますが、ストーリーとしてかき回すのでキャラクターとしてはとても好きです。
●ユキ/吉田紘之(元男性)●
二鳥くんと高槻さんの「大人の友達」2人の良き理解者。 - 幼い頃から性別違和を感じていたあたり、性同一性障害だと思われますが、作中では明確にされていません。ストーリーの雰囲気から名前や戸籍の女性変更は行っていないっぽいです。
性別適合手術についても明記はされてないので、なんと言えないんですが、ヴィジュアルは長身の綺麗なお姉さんで美人。
母とは冷戦中だったり、行けなかった修学旅行に恋人のしーちゃん(小学時代の同級生)と一緒に行ったりと、性別移行後の壁的な物や思いも描いていて、主人公2人の思春期とは違う味を出しています。
●海老名泰一郎(女性装者)●
中年男性で幼い娘がいて、妻とは死別している。
フルタイムの女装というワケではなく、休日のハーフタイム女装。
趣味の範囲でも、仕事での女装でもないクロスドレッサー(異性装者)といったところでしょうか。女装が似合わないことを自覚してる……そんな感じのヴィジュアル。
「ありのままの自分とはなにか」に葛藤したり「世間体」を気にしたりと、異性装、特に「女装」における悩みや複雑な感情を作中では描いています。
いろんな『性』の在り方もそのひとつだけど、二鳥くんのように誰もが女装すれば可愛くなるとは限らない、そういう現実もあったり……。
彼は物語においてはそんな目立った活躍をするわけでも、重要な立ち位置というわけでもないのですが、二鳥くんとは違った【現実】を表現しているようで、個人的にはなくてはならないキャラクターだと思います。 - ●二宮文弥(男の子)●
二鳥くんたちの一学年先輩。
好意を持っていた女の子に進められて女装し、その子の気を引くためにまた女装している……不思議な経歴の男の子。
あくまで趣味の範囲での女装で二鳥くんのように「女の子になりたい」とは思ってない。
クロスドレッサー(異性装者)や男の娘に近いかなーとも思うんですが、好意を持っていた女の子と付き合った今、女装する必要なかったり。
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異性装をしたり、性別移行をしていたりといった、主に【性別】に関わるキャラクターだけをピックアップしました。
本当はもっともっと素敵なキャラクターがいるんですけどね。
作中には女の子になりたかったり、ノリで男装したり、真剣に女装したり、性別移行してたりと「性別」に関するキャラクターがいっぱい登場します。
そういった視点で本当に「性別ってなんだろう」と思いました。
私自身が「元男子」ということもあって、二鳥くんやマコちゃん(有賀誠くん)、ユキさんにはとっても共感しちゃったり……反対に全くしなかったり。
主人公の2人をはじめ、何人か己の性別について考えてる人もいますが、みんなそれぞれで考え方や行動の移し方が違う、それだけ「性別」って多様なんだと思えるし、無理やり「男」「女」という枠や「性同一性障害」「同性愛」「異性装者」っていう枠にも当てはめたくないな、とも思います。
今回キャラ紹介では書いてないけど、ウチ個人的には「いいヤツかヤなヤツかわかんない」土居くんが好きです。意地悪だけど、どことなく優しい感じが。
素敵なキャラクターを楽しむのも良しなので、機会があれば是非一読してみてください。
花嫁は元男子。 Amazon※ブログで使用している画像・イラストの無断転載はご遠慮ください。
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