【倉琉ヨシーデの独り言】


835   倉琉ヨシーデの不安定日記


    6月14日


   小説

  ◉ 「走れエイト!」75


どうして

許可を得るのか分からないが

とにかく無断では やらなかった。


たぶん まだ稽古をやってると

思わせたかったのだと思うが


何日も何日もかかって倒すとは

ずいぶん 

回りくどいやり方だとは思った。


古手川組は昔から

武闘派と言われていたようだが

滅多なことでは

人を殺したりはしなかった。


たぶん空手をやってる人が

多かったから

武闘派ではなく

武道派だったのではないか

と思っている。


だから空手に対しては

人一倍 慎重だったに違いなかった。


稽古が終って

真寿美はいつものような感じで帰った。


「先に帰るから片付け

 よろしく頼みます。」


そう言って帰って行った。


ように見えたが 実は・・・。


「それじゃあ稽古やろうかな。」


玉木が楽しむように言った。


残った生徒は予想どおりの人たちで

哀川裕二(あいかわ ゆうじ)

 と

梶原喜一(かじわら きいち)

 と

飛田氷魚(とびた ひお)

だった。


その時に道場の扉が開いた。


「ガラ ガラッ。」


そこには帰ったはずの真寿美がいた。


「エッ。」


玉木は明らかに動揺した。


「なんで真寿美が?」


動揺と同時に

真寿美を呼び捨てしたことで

本性があらわになった。


「哀川裕二さん

 梶原喜一さん

 飛田氷魚さんは

 帰ってもいいですよ。」


真寿美は生徒を解放して

帰らせた。


「玉木さんと高橋さん。


 やってくれましたね。」


真寿美は玉木と地井を睨みつけた。


「真寿美さん。


 なんのことでしょうか。」


玉木はこの期に及んでも

知らないフリをした。


「玉木さん 高橋さん。


 私はあなた達を知ってますよ。


 あなた方は

 私が直樹さんを助けに行った時に

 確か いましたよね。


 あなた方は

 この道場で初めてあった時に


 私を覚えていないような

 感じだったけど


 私はしっかりと分かりましたが

 意味が分からないので

 しばらく様子を見ました。


 ふたりとも上手く潜入出来たと

 思っていたようだったけど

 私は全て知っていましたよ。


 ただ こんな事をするとは

 思っていなかったので

 すごく残念です。」


真寿美は玉木と地井を

知ってたことを 


そして 

しばらく様子を見てたことも

すべて話した。


「よくもかわいい生徒たちを

 傷めつけてくれたわねえ。」


真寿美は今まで冷静に話していたが

怒った感情をあらわにした。


それに対して玉木は正体を明かした。


「知ってたのか。


 なら しょうがない。


 お前が高橋と言ってる

 この地井も先に潜入させて


 ある程度 探らせてから

 俺がやってくるという

 手はずになってたのさ。」


玉木はバレたからか分からないが

かなり饒舌になった。


〜つづく〜