【倉琉ヨシーデの独り言】
833 倉琉ヨシーデの不安定日記
6月12日
小説
◉ 「走れエイト!」73
真寿美が帰ったあと
雅人が見ているとは知らない
玉木と地井は
我が物顔な振る舞いだった。
「おい 組手の稽古をしようぜ。」
3人が声をかけられて残ったが
一応 全員先輩なのに
玉木は横柄な言い方だった。
田中伊織(たなか いおり)
と
山崎明一郎(やまざき めいいちろう)
と
勝山央一(かつやま おういち)
は
自分たちが
なんで残されたのか分からないが
『稽古をつけて下さい』
と玉木に言われたみたいだった。
田中伊織は
玉木と組手の稽古をした。
《なんだか苦しそうに
ふぅーふぅー言ってる。》
と思ったら
頭に上段回し蹴りを受けて
ぶっ倒れてしまった。
地井は田中伊織を
道場の隅まで引きずって片付けた。
次は地井が
山崎明一郎と組手の稽古をした。
《次は彼が組手の相手か。》
地井は中段前蹴りとか中段突きとか
とにかく腹ばかり狙った。
《あんなに腹ばかり狙って
かわいそうになあ。》
案の定
山崎は腹を押さえて苦しがり
倒れてしまい
そのまま意識がなくなった。
最後は勝山央一が玉木と組手をした。
勝山はビビっていたが
それでも玉木と組手の相手をした。
でも勝山は誰が見ても
すぐに分かったが
玉木の相手が
出来る状態ではなくなった。
上段から下段の攻撃を
サンドバッグのように受けたのだ。
《これは稽古では無いな。
完全にリンチだな。》
そして勝山も倒れてしまい
意識をなくした。
玉木と地井は
3人をそのままにして帰って行った。
それを隠れて見ていた雅人が
出てきて一言 言った。
「これは ひどい!」
雅人はあまりの惨劇に
それしか言えなかったようだった。
帰ってから雅人は
すぐに衛登に電話をした。
「もしもし 衛登。
お前
青龍支部ってどうなってんの。」
雅人は訳が分からずに聞いた。
「どういうことですか?」
衛登は逆に聞き返した。
「いいか衛登。
今から俺が見たことを
素直に話すから よく聞けよ。」
雅人は衛登に
見たことを正直に話した。
そして驚いた衛登は
電話を切ると
真寿美にそのままを話した。
「だから来る生徒が少なかったのね。」
改めて真寿美は納得した。
「衛登さん。
雅人さんから聞いた
来なくなった生徒を教えて!」
真寿美は衛登に対して
だいぶフランクになってきた。
「伊藤翔(いとう かける)君
と
長谷川善太(はせがわ ぜんた)君
と
佐藤環(さとう めぐる)君。
雅人さんが見た生徒が
田中伊織(たなか いおり)
と
山崎明一郎
(やまざき めいいちろう)
と
勝山央一(かつやま おういち)
かぁ。」
真寿美は紙に書いて確認した。
「ちょっと見せてくれる。」
衛登は真寿美の書いた紙を見て
何かを思ったみたいだった。
〜つづく〜