【倉琉ヨシーデの独り言】


811   倉琉ヨシーデの不安定日記


    5月21日


   小説

  ◉ 「走れエイト!」51


第2試合目は

ブアカーオ・ポープラムック対

木村 知里だった。


「赤コーナー 

 ブアカーオ・ポープラムック

 青コーナー

 木村 知里」


リングアナウンサーが選手を紹介したが

ブアカーオ・ポープラムックは

ブアカーオという

名前を借りたニセモノで

かたや木村知里は改めて

正式に本当の名前を言われると

とても恥ずかしかった。


鐘が打たれて試合が始まった。


いきなりブアカーオが

キムチの顔面に

左回し蹴りを出してきた。


それを避けて

すかさずキムチが

ブアカーオの軸足に

左下段回し蹴りを出した。


怒ったような感じの

ブアカーオは少し前に出て

キムチの顔面に前蹴りを出した。


それも避けたキムチは

顔面に何発もパンチを出した。


チャンスと思ったキムチは

首相撲でブアカーオに

膝蹴りを何発も出した。


ロープに突き放して

戻ったところを

飛び膝蹴りで倒しダウンさせた。


カウントされたが

立ち上がる事はなかった。

 

《キムチが強かったのか

 ブアカーオのニセモノが弱かったのか

 どちらにしろ

 キムチが勝った事に間違い無いな。》


そう思った衛登だったが

まもなく衛登も試合だった。


第3試合目は

ロッタン・ジットンムアンノン対

中河 衛登の試合だ。


当然

ロッタン・ジットンムアンノンも

名前を借りたニセモノだ。


「赤コーナー

 ロッタン・ジットンムアンノン

 青コーナー

 中河 衛登」


衛登がガウンを脱いで

キックボクシングパンツ姿を見せた。


《あまり見ない衛登の姿だな。》


雅人も初めて見る姿だった。


いよいよ第3試合が始まった。


衛登は仁王立ちかと思ったら

いきなり走って行って

飛び蹴りをした。


それをかわしたロッタンは

振り向いて攻撃しようとした。


そこに衛登がパンチを

腹部に出したが苦しみながら

ロッタンが一発で倒れてしまった。


ロッタンは

カウントするまでもなく

負けてしまった。


《勝負はあっけなかったな。》


雅人は

『これで採算が取れたのかなあ』

と他人事ながら古手川の事を心配した。


罰ゲームみたいな

キックボクシングの大会は終わった。


「こんな感じで

 良かったんですか?

 

 終わったのに 

 すっきりしないのは

 なんか原因でもあるんですかねえ。」


衛登は雅人に

なんかすっきりしないと思い

軽く相談して見た。


「いいんじゃないの。


 こっちは2対1で勝ったんだし

 衛登は戦わなくてもいいのに

 戦ったし

 何も言う事ないんじゃないの。


 ただ桐生は負けたから

 ちょっと落ち込んでるかも

 知れないけどなあ。」


「まあ桐生の事は言ったら

 きりがないと思いますけど

 あんな大衆の面前で 

 恥を掻いたんですから

 いい薬にはなったとは思います。」


 桐生の話は

 あまり考えられなかったが

 全体的に勉強にはなったと

 衛登は思っていたみたいだった。


〜つづく〜