【倉琉ヨシーデの独り言】


809   倉琉ヨシーデの不安定日記


    5月19日


   小説

  ◉ 「走れエイト!」49


『何が言いたいんですか?』

と思ってしまうくらい

あまりにも理不尽な話だったので

衛登は受け入れがたかった。


「あの〜 

 それだと俺が優勝した意味が

 ないんですけど

 雅人さんはそう思いませんか?」


衛登はなんて答えたらいいのか

分からずにいた。


「う〜ん 分かりました。


 雅人さんがそこまで言うなら

 引き受けますよ。」


《ただキックボクシングなんて

 やった事ないから

 キックボクシングやる時の

 パンツを買わなきゃな。》


普通なら断る話を了承した衛登は

余計な事を考えていた。


「あの キックボクシングやる時の

 ボクシングパンツがないんですけど

 どうしましょうか?」


「なんだお前 

 そんな事 考えてたの!


 直樹に付き合ってもらって

 スポーツ店で買って来いよ。」


さっきまでの雅人と違い

かなり饒舌になった。


「それが直樹がちょっと調子が悪くて

 胃が痛いから

 病院に行って調べたら先生に

 『あんた柿 好きなんだねえ』って

 言われたみたいなんです。」


「なんだそりゃ。」

 

衛登の話に雅人は

訳が分からなかったようだ。


「直樹は柿が好きで

 『年中 柿 食べてるなあ』

 と思って聞いてみたら

 胃の中に『柿胃石』

 というものが出来てて

 柿の中の渋み成分タンニンが

 胃の中で食物繊維と結びついて

 固まったらしいんです。


 レントゲンで分かったんですが

 柿胃石は通常固く化学的溶解には

 あまり反応しないため

 内視鏡的摘出術を

 やったみたいですよ。」


衛登は直樹の今現在の状態を説明した。


「なんだ やけに詳しいな。」


「もう 嫌と言うほど聞きましたから

 雅人さんに説明できるほど

 覚えちゃいましたよ。


 だから 

 今あまり柿を食べないようにしてて

 療養中なんです。」


「仕方ないな。


 衛登お前 スポーツ店に行って

 適当に

 キックボクシングのパンツを

 買って来いよ。」


雅人はなんとか衛登を

説得できたみたいだった。


そしてタイから

ムエタイの選手が入国した。


タイからムエタイの選手を呼ぶにも

かなりの費用が必要だったが

これを考えても古手川の出費も

罰ゲームみたいに痛かった。


ムエタイの選手の名前も

ブアカーオ・ポープラムック・

ロッタン・ジットンムアンノン・

センチャイ・PKセンチャイジム

と有名な選手ばかりだったが

全員ニセモノで

名前を偽っていただけだった。


「雅人さん 

 ムエタイの選手が来たみたいですね。


 みんな本物の名前を偽った

 ニセモノみたいで

 憧れなくて良かったです。

 

 でもムエタイのリングを

 見てみたかったし

 一度経験したかったから

 勉強になりますよ。」


衛登は

事務所でムエタイの選手について

雅人にいろいろな情報を話した。


ムエタイの試合は

それから一週間後に

やるようになってたから

それぞれがトレーニングして調整した。


〜つづく〜