【倉琉ヨシーデの独り言】


805   倉琉ヨシーデの不安定日記


    5月15日


   小説

  ◉ 「走れエイト!」45


次は第2シードの桐生 対

糸東流空手の山村の試合だった。


桐生は不敵な笑みを浮かべて

衛登のほうをチラッと見た。


「お互いに礼。


 構えて! はじめ。」


桐生は糸東流空手の山村の

太もも外側に右下段回し蹴りをした。


すると山村も桐生の太もも外側に

右下段回し蹴りをした。


桐生は山村にもう一回

太もも外側に右下段回し蹴りをした。


負けじと山村も桐生の太もも外側に

右下段回し蹴りをした。


桐生は今度は山村の左太もも内側に

左下段回し蹴りをした。


山村も同じく桐生の左太もも内側に

左下段回し蹴りをした。


「さっきから両者

 同じ手を繰り返してる感じだな。」


さすがに衛登も

何かを感じているみたいだった。


衛登の言うとおり

その後も山村は

桐生と同じ技を何回か繰り返した。


そして衛登には

桐生が山村に

目で合図をしたように見えた。


その瞬間

桐生が山村の頭部に

右上段回し蹴りをして倒れた。


しかし衛登には

明らかに仕組まれた芝居を

見せられた感じがした。


これで衛登と桐生が決勝に残った。


しばらくして衛登は

目を閉じていた。


なぜか直樹には決勝を前に

精神統一をしているかのように見えた。


そして衛登と桐生は一礼して

決勝の舞台に立った。


衛登はその前にキムチと

何やらヒソヒソ話をしていたのが

直樹には少し気になった。


実は目を閉じて

精神統一をしてた訳ではなく

少し考えることがあって

キムチにも相談していたみたいだった。


衛登と桐生は

お互いに目をそらさなかったが

衛登は何処か睨む感じが

なにか違うと直樹は思っていた。


「お互いに礼。


 構えて! はじめ。」

 

もう流派がどうの空手がどうの

なんて関係がなかった。


直樹はそう思っていたが

衛登は違う事を思っていた。


衛登が決勝戦に望む少し前・・・。


「キムチ 少しこっちに来てくれ。」


衛登はキムチを

誰もいない所に呼んでいた。


「桐生から頼まれた子分が

 メモのようなモノを渡してきて

 真寿美が捕まって

 何処かに縛られてるようだ。


 俺が負けないと

 真寿美がどうなるか分からない。


 だから

 お前はタカイと協力して

 なんとか真寿美を見つけて

 助け出してくれ。


 頼む! 

 それまで試合を長引かせる。


 お前の強さは分かってる。


 お願いだ。


 なんとか助けてくれ。」


衛登は誰にも聞こえない小さな声で

キムチに助けを求めた。


〜つづく〜