【倉琉ヨシーデの独り言】


803   倉琉ヨシーデの不安定日記


    5月13日


   小説

  ◉ 「走れエイト!」43


そして準々決勝の第1試合が始まった。


「忍術の達人 小牧 対

 フルコンタクト空手の達人 衛登

 の対戦だな。」


調査してくれた雅人が

衛登なら絶対に大丈夫と 

ワクワクしながら見始めた。


やはり忍術の小牧は

空手と違って独特な構えだった。


衛登はその構えを見ながら

思っていた。


《忍術って

 どんな感じなんだろう。


 ちょっと様子を見てみようか?》


衛登は忍術に興味が出て来て

しばらく倒すのを止めた。


《受けだけで攻撃を凌ぐのは

 長いなあ。》


しかし それ以上何もなく

忍術と言っても

普通の空手と何も変わりはなかった。


衛登はそれを感じて

しびれを切らし

あっという間に腹に蹴り一発で倒した。


「凄いな。


 修行の成果が出たな。」


雅人も直樹も驚いたが

衛登なら当たり前だろうなあ

とも思っていたようだった。


「準々決勝の第2試合は

 少林寺拳法の宮田 対

 糸東流空手の山村だな。」


プログラムを見た雅人が

得意げに言った。


「なんか雅人さんが

 主催してるみたいですね。」


少し直樹が茶化した感じだった。


準々決勝の第2試合が始まって

雅人と直樹は

他人事のように見ていたが

衛登は注目して見ていた。


「お互いに礼。 


 はじめ!」


少林寺拳法と糸東流空手の

対戦が始まった。


「なあ直樹!


 俺は前から思っていたけど

 糸東流空手って

 俺がやってる空手に似てないか。」


衛登があからさまに

自分の空手のことを言ってきた。


「まあ そう言われれば

 似てないこともないけど・・・


 どうしてそんな事を確かめるんだ。」


直樹が聞き返した。


「俺は生まれた時から空手が好きで

 なんで空手がずっと

 好きなんだろうって 

 考え続けて来た。


 考え続けて来たけど分からないから

 とにかく 

 がむしゃらに空手をやって来た。」


「へぇ~ そんなに好きだったんだ。」


直樹も好きだった事に

『へぇ~』と言ったが

『やっぱり』とも思った。


「小さい頃から独学でやってきたけど

 限界があって

 誰かに教えてもらいたいと思って

 父親に紹介して貰って

 入門して教えて貰ったんだよ。


 入る時に確か空手の先生が

 自己紹介で 

 『なになに流のなになにです』

 って言ったと思ったが

 なにせ子供の頃だったので

 忘れたよ。


 だから自分のやってる空手が

 なに流か確かめたかったんだ。


 それからは独立して

 独自の空手を作ってきたから

 今はフルコンタクト空手を

 名乗っている。」


あまりに話が長くて

話し込んでしまった衛登は

話に夢中になりすぎて

試合を何も見てなかった。


糸東流空手の山村が

右回し蹴りを

少林寺拳法の宮田の頭部に決めた。


そのまま少林寺拳法の宮田は倒れた。


衛登の耳には

糸東流空手の山村の勝ちとだけ

聞こえてきた。


〜つづく〜