【倉琉ヨシーデの独り言】


797   倉琉ヨシーデの不安定日記


    5月07日


   小説

  ◉ 「走れエイト!」37


雅人の事務所に灯りが着いていた。


「『こんにちは』 

 あ〜もう『こんばんは』か!


 雅人さん 行ってきました。」


「お〜 衛登!


 なんか山籠りしてたんだって。」


雅人は衛登に会ったのが

まだ一週間ぐらい前なのに

久々に会ったような気がした。


それもそのはずだ。


衛登は わからないようだが

かなり鍛えたのだろう

傍目から見ても素晴らしく

久々に会ったみたいに

たくましくなっていた。


「いや〜 大変でした。


 だけど

 ある程度は頑張りましたよ。」


衛登が苦労したのは分かるが

雅人は何を今さらという感じだった。

 

《だいたい衛登は宇宙人並みに強い。


 いや宇宙人ではないのか。


 どうやったら

 こんな人間を作れるのか?


 環境なのか?


 それとも生まれついてのモノなのか?


 だとしたら空から地上を見て

 自分に良さそうな人を選んで

 この人の元に生まれたい

 とかあるのかな?


 とにかく凄い才能だ。


 こんな人間は見たことが無い。》


雅人の独り言は終わりがなかった。


「とにかくトーナメントの日は

 なんとか頑張ろうと思っています。


 自信ないですが優勝したいです。」


衛登は自信が無いと言っておきながら

はっきりと優勝宣言をした。


「お前ならできるよ。


 頑張れよ。」


雅人は衛登なら大丈夫と

かなりの余裕だった。


もうひとつ 

雅人は思いついた事があった。


《前に道場で

 稽古をやりすぎた生徒が腕を痛めて 

 肩が上がらなくなった

 生徒がいたけど


 痛がってた生徒の腕に

 衛登が手を当てて

 しばらくジッとしてたら


 そんなに長い間

 手を当てていないのに

 生徒が腕が痛くないと喜んでたけど


 衛登は治療も出来るのか

 と思っていたが

 これも衛登の中では武術なんだな。》


そう思った雅人だったが

よく考えると

これもかなり凄いエピソードだった。


「じゃあ当日 がんばりますので

 よろしくお願いします。


 失礼します。」


衛登は今の自分のやる気を

雅人に報告して帰って行った。


殴り込みに行った先の組長が

話していてワクワクすると言ったが

衛登もその日の夜 

同じ気持ちで

ワクワクして寝られなかった。


そして 

いよいよトーナメントの日が

やって来た。


〜つづく〜