【倉琉ヨシーデの独り言】


795   倉琉ヨシーデ不安定日記


    5月05日


   小説

  ◉ 「走れエイト!」35


すると それを聞いてた桐生が

茶化すように雅人に言った。


「せっかく来たのに

 このまま返すわけないよなあ〜。


 まあ そこに衛登がいる以上

 お前たちを囲んでも

 俺らがやられるのは目に見えてる。


 だったら提案があるけど

 ちょっと聞いてもらおうか。」


桐生がそこまで言ったが

しびれを切らした組長に遮られた。


「そっちの兄ちゃんは

 みんなが手を出さないという事は

 かなり強いし

 それだけ知られているんだなあ。


 それなら話は はえ〜わ。


 よく聞けよ。


 組から一人空手の強いヤツを選んで

 そいつ等を戦わせる。


 勝ったヤツの組の言うことを聞く。


 いいか。

 

 優勝したヤツが好き勝手に言うから

 とにかく言うことを聞く。


 これは守ってもらうぞ。いいな。


 もちろん 

 うちの組も空手の強いヤツを呼ぶし

 うちの傘下にも声をかけるから

 7〜 8人のトーナメントになるかな。


 いろんなヤツが来るぞ~。


 話していてワクワクするなあ。」


古手川は話し好きみたいで

分かるように話してるつもりだった。


あまりに長いから桐生が横はいりした。


「オヤジが話したとおりだ。


 今から2週間後に試合をやるから

 腕を磨いて待ってろ。


 後で手紙で知らせるから

 楽しみにしてろ。」


雅人も衛登も聞いてるだけだったが

話は だいたい分かった。

 

雅人は古手川組から

自分の事務所に戻り

さっそく衛登に相談した。


「俺は衛登を選ぶつもりだが

 衛登はそれでいいか?」


雅人は衛登の顔を覗き込んだ。


「もちろん選んでもらうのは

 光栄ですが

 どんなヤツが来るか分からないので

 少し練習が必要だと思います。」


衛登は謙遜したが油断大敵だった。


「だけど衛登 

 組長とか桐生が

 笑ったりして話していたけど

 古手川組に

 俺は狙われているの

 忘れないでくれよ。


 俺の知ってる限りでは

 笑っているヤツほど

 残忍な人が多いからな。」


雅人は衛登に改めて注意を喚起した。


「分かりました。


 よく注意しておきます。


 それじゃあ

 とにかく練習したいので失礼します。


 ありがとうございました。」


そう言って衛登は雅人にお礼を言って

事務所をあとにした。


その後 衛登は真寿美に道場を頼んで

一週間 山に籠もった。


朝だったが訳が分からなかったので

直樹に電話してみた。


「もしもし直樹さん

 衛登さんの事 なにか聞いてる?


 急に朝

 山小屋に行くって出かけたから

 直樹さんなら

 何か知ってるかと思って。」

 

真寿美は慌てて電話したが

直樹も訳が分からなかった。


「えっ 衛登 山小屋に行ったの?


 俺には何も言わなかったけど。」


直樹も突然の出来事に

驚きを隠せなかった。


「なんか一週間ぐらい

 山籠りするみたいですけど

 訳が分かんなくて。


 どうしたらいいですか。」


分からないから直樹に指示を仰いだ。


「とりあえず

 一週間したら帰るのだったら

 様子見てみようよ。


 まあ 話はそれからかな。」


直樹が言った一週間を

真寿美は待つことにした。


〜つづく〜