【倉琉ヨシーデの独り言】


794   倉琉ヨシーデ不安定日記


    5月04日


   小説

  ◉ 「走れエイト!」34


翌日 何とかしないと

ダメだと思った衛登は

さっそく雅人に相談しに行った。


「こんにちは!


 おじゃまします。」

 

「おお 衛登 何のよう。」


「ちょっと ご相談がありまして。」


衛登は雅人をすっかり頼り切っていた。


「なんの相談?」


雅人は衛登の相談は出来るだけ聞いた。


「俺が空手の稽古を頼まれて

 直樹と一緒に出張に行った時に

 ヤクザの桐生 分かりますか?


 あの桐生が道場にやってきて

 試合をやれと言って来たみたいです。


 たぶん 俺がいないのを分っていて

 計画的に狙ったと思うんですけど 

 勝負を受けたみたいです。


 結果 負けたみたいですけど

 いない時にやって来るとは

 あまりにやり方が卑怯で

 どうしたらいいかと思って

 雅人さんの意見を聞きに来ました。」 

 

衛登は だいたいの事を話して

雅人がなんて言うか待っていた。


「あのさ 

 いないのを狙ったかも知れないが

 要するに衛登を困らせるのが

 目的だろうし

 もっというと俺を狙うのが

 最終的に目的だろうから・・・。」


そこで雅人の話は止まった。


止まったと言うより

考えてると言った方が正解だった。


雅人が口を開いた。


「やっぱり・・・分からない。」


衛登はコントみたいに軽くズッコケた。


《雅人さんも

 いろいろ考えてんだなぁ。》


「でも俺が原因なのは

 間違いないから・・・。」


と言って雅人は再び話が止まった。


「だけど・・・どうするかな。」


雅人はそれでもやっと話す気になった。


「俺がヤクザの組に行って

 話を収めてくる。」


何回も話が止まったのは

もうヤクザをやめてるので

そういう人たちに

会いたくなかったからみたいだ。


「ヤクザの組が

 何処にあるか知ってるから

 衛登 一緒に来てくれ。」


雅人は衛登に頼んで

一緒に来てもらった。


すぐに雅人と衛登は

かなり大きな組の古手川組に向かった。


二人は何を言われるのか

特にヤクザの組を畳んだ雅人は

戦々恐々だった。


ヤクザがあるビルのドアをノックした。


「ノックしたけど入っていいかな?」


子分たちは雅人を知っているのか

誰も何も言われずに入ってきた。


雅人は衛登と共に

組長の前までゆっくりと歩いて行った。


組長の横には桐生宗一が

不敵な笑みを浮かべて座っていた。


「よお 大久保のお!」


組長の古手川巌(こてがわいわお)は

大きな声で雅人たちに挨拶した。


「それで今日はなに!


 またヤクザの組でもやるのかな?」


古手川はイヤミたっぷりだった。


「俺はもうヤクザに戻る気はない。


 今日は お願いがあってここに来た。


 いつまでも俺を狙うのは

 やめてもらいたい。


 以上 失礼した。」


なんか雅人のお願いは

まるで野球選手のような宣誓だった。


〜つづく〜