【倉琉ヨシーデの独り言】


778   倉琉ヨシーデ不安定日記


    4月18日


   小説

  ◉ 「走れエイト!」18


道場の中がなんか明るくなったと

言いたかったようだったが

伝えるにはいい機会だった。


「最近 

 生徒が増えてると思いませんか?」


唐突に海斗が質問した。


「私が道場をやめちゃったので

 中河空手道場を薦めたら 

 習いたい人が生徒として

 来たみたいです。


 (道場に行ってみた)って聞いたら

 (雰囲気いいですよ)って言うから

 (私も行ってみたい)って言ったら

 (ぜひ来てください)って言うから

 来てしまいました。


 だから ここの生徒で知ってる人

 何人か けっこういます。」


海斗はあからさまに言った。


「そうか 

 だからチラチラ

 こっちを見る生徒がいたんだな。」


衛登は話をしながら

こっちを見る生徒がいた事に

違和感というか

不思議な感じがしていたが

やっと分かってホッとした。


「私も権田同様 入門しても

 いいでしょうか?」


海斗は

今だに権田と呼んでいるようだった。


「キムチ同様

 あんたも入ってやってるんだから

 今さらなに言っても

 仕方ないよ。


 とにかく頑張んなよ!


 あ〜 それから

 キムチ同様あんたも

 タカイと呼ばせてもらうから

 承知しといてね。」


と言って衛登は生徒たちに向かって


「ハイ じゃあ稽古やめてください。」


衛登は急に稽古をやめさせた。


「いつも普通に稽古に入るので

 今日は自己紹介をします。」


明らかに元岳野原道場の人たちに

向けての事だった。


「私が師範の中河衛登です。

 

 そして こちらにいるのは

 師範代の飯田直樹です。


 頑張りますので

 何卒よろしくお願いします。」


ほとんど 

やる事のない自己紹介をやったが

ほんとに珍しい光景だった。


そんな時に道場に訪ねて来た人がいた。


「あの~木村さんいますか?


 木村知里さんです。いますか?」


訪ねて来た人は

高野真二という名前の人だった。


そう岳野原海斗を担ぎ上げた張本人の

高野真二というヤツだった。


そうとも知らずに

訪ねて来た人に木村は会いに行った。


《誰が来たんだ。》

 

そう思って出てみると

そこには高野真二がいた。


「あれ高野さん なんですか?」


「ここに師範がいるだろ。」


高野は師範を呼んだら

名前でバレると思って

先に木村知里を呼んだようだ。


「いますよ。あの海斗師範〜。」


木村は元師範を大きな声で呼んだ。


「誰ですか? なんだ高野か!」


高野はバレないように小声で喋った。


「バレると思って木村知里を呼んだが

 もう入門してたの

 知られてたみたいだな。」


もう入門してたのは分かっていたので

最初から海斗を

呼べば良かったと思っていた。


「ところで俺になんのよう?」


海斗は

稽古中だから早くしてくれ

という感じで衛登の方を見た。

 

「悪いんだけど

 少し用立ててくれないかなあ。」


高野は人がいる こんなところで

金を請求してきた。


もはや不逞の輩のようだった。


〜つづく〜