【倉琉ヨシーデの独り言】
596 倉琉ヨシーデ不安定日記
10月14日
小説
◉ 「不倫の果てに」14
唯も忠志に
本音をぶつけるように言った。
「落ち込んだ時は
余計に元気を出します。」
「すごくカラ元気だけど
ニセの元気を出してると
そのうちに本当に
元気になっていく感じがあって
自分に励まされます。」
唯の落ち込んだ時の対処法が
忠志にもいい教訓になった。
この人は
保険に向いているかも知れない
と忠志は思った。
唯は人受けもよく
一軒目に行った家の人にも
普通は家にも入れてもらえないけど
はじめてなのに言葉たくみで
家の人にえらく気に入られた。
ますます忠志は
いい人材を見つけたと思っていた。
それに唯は誰に対しても愛想が良く
いつもニコニコしている。
自分の家にいる時は分からないが
多分この人は
かなり外向的なんだ。
「なぜそんなにニコニコ出来るの。」
「家にいる時もそんな感じなの。」
忠志は唯に興味が出てきて
質問攻めだった。
「私が家にいる時は普通ですけど
でも
私を怒らせると怖いみたいですよ。
なんちゃって。」
唯は慣れてきたのか
会話にも余裕が出てきた。
「課長に年の話をして
申し訳ないのですけど
課長と私は同じ年なんですね。」
「そうだよ。どうして。」
「同じ年だから
すごく話やすいと思って。」
「年だけ取って
この仕事 長いだけだよ。
いわば《光陰弓のごとし》だね。」
言いたいことは分かったが
《光陰矢のごとし》
だと思うのだが。
とにかく唯は外交員として
天性のものがあって
素晴らしいと忠志は思った。
ますます気に入った。
〜つづく〜