NVIDIAのこと | オーディオの楽しみ

オーディオの楽しみ

一音楽ファンの目から見たオーディオのページです。いい音で音楽を聴けるのは至上の喜びです。

 

NVIDIAが話題になっている。なんでも半導体の売り上げでインテル、サムスンを抜いて世界一になったという。驚く話ではない。画像処理プロセッサー(GPU)の性能が、中央処理プロセッサー(CPU)の能力を上回るということは、20年以上前から言われていた。

ただ、GPUメーカーはNVIDIAだけではなく、なぜこのメーカーだけが突出しているのかという理由については、このメーカーの歩んできた歴史を知る必要がある。

 

私のようにパソコンを自作する人間にとってNVIDIAの名前は昔から非常になじみ深いものだ。IBM互換機というのは画像に関しては幼稚なもので、640x480ドット、16色のキャラクター・ユーザー・インターフェース(CUI)だけだった。当時としてはグラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)というのは標準ではなく、別にグラフィック・ボードが必要だった。だから、GPUを持ったグラフィック・ボードを買ってきてマザーボードに取り付けた。互換機の標準ではないので、ドライバーはGPUメーカーが自力で開発して提供した。

で、問題はここからだ。これが往々にして動かないのだ。自作派にとってこのグラフィック・ボードを動かすというのは、最大の難関といってよかった。

当時の主なGPUメーカーとしては、対NVIDIAの最大手であるカナダのATIというメーカーがあった。さらに言えば、同じカナダでMatroxというメーカーもあった(少し価格が高かったが、これはこのメーカーのGPUは発色が良くてきれいだという噂があったからだ。私はいくら目を凝らしてみても確かめられなかった。私の友人も同じ意見だった)。

私はそれに加えてさらにチューナー・カードなどを使った。パソコンでTVを見るためのものだった。パソコン用のチューナー・カードは、グラフィック・ボードと組み合わせて動作するが、これを動かすのはもっと難関だった。さらには昔はサウンド・カードなどというものもあった。私は色々試すうちに、それぞれ10枚ほどのマザーボードやグラフィック・ボード、チューナー・カードなどを使った。

結果としてどうだったか。

NVIDIAのGPUを使ったグラフィック・ボード(ブランド名GeForce)はどんなマザーボードでも、どんなチューナーカードでも、どんな組み合わせでも、全て動いた。それに対して、ATI(ブランド名Radeon)やMatrox(ブランド名Millennium)のGPUでは、反対に1枚たりとも完全に動いたものはなかった。

これは会社の立ち位置とも関係しているだろう。ATIは、大手のメーカーなどにボードを供給するのが得意だった。つまり限られた特定の組み合わせが得意だった。画像処理自体はむしろ上という人もいたのだが。それに対してNVIDIAは、PC用にありとあらゆる組合わせで動く必要があった。ソフトウェア互換という意味では、鍛えられ方が違ったと言ってよい。先端的なゲームメーカーとの接点も多かっただろう。

だからNVIDIAは、メーカーという言われ方をされることが多いが、エンジニア9割の中で、実はソフトウェア・エンジニアの方が、ハードウェア・エンジニアよりも多いのだという。これは主たるターゲットであるゲーム市場で、NVIDIAが協業を重視してきた結果だろう。同社の言葉をかりれば、それらの企業とエコシステムを作ってきたということが出来る。3Dポリゴンなど、私は良く知らないが、凄まじい世界と思う。

 

パソコン自作派にとって、「動く」ということは最も重要な要素の一つだ。だから、どんな環境でも必ず動いたNVIDIAの存在は本当にありがたかった。昔から、協業やエコシステムを重視してきた結果だろう。

これがAI市場での優位性、半導体市場での競争力にどのように関係しているかはよく分からない。株価のことは更に分からない。しかしデジタルというのはオープン・プラットフォームで、日本企業はそのあたりに問題があるというのは、最近特に認識されてきていることと思う。