★★★★☆

第162回直木賞受賞作。

金田一京助がその半生を「あいぬ物語」としてまとめたヤヨマネクフ(山辺安之助)の生涯を軸に、樺太に生きる「人」、時代、そして世界が描かれている。

「極寒」の中に生きる人々の「熱」。

その温度の対比がとても鮮明でした。

辛い内容もたくさんあるのに、所々でクスリとさせるような記述を交えながら、重苦しくなり過ぎずに書かれており、
完成度の高さを感じる作品でした。

壮大なスケールのお話なのに、ちゃんと無理なく収束していたのがすごい。

もうね、欠点がない。
文句なしの直木賞受賞だと思います。
強いて言うなら、そのそつのなさが欠点か?(強いて言う必要なんてないけど)

なんとなーく、以前の直木賞受賞作「流」と同じジャンルに入る感じがしますが、
「流」が粗削りな作品だったのに対し、こちらはスマートな印象。
でも個人的には「流」の方が好きかも。欠点がある方が愛着がわく…笑

老若男女、読書好きな方には誰にでもお勧めできる、手堅い一冊だと思いますニコニコ