★★★★☆
TSUTAYAをパトロールしていたら、たまたま目が合った第155回芥川賞受賞作。
芥川賞は青田買いの要素が強い感じがして敬遠しがちなのですが、
なんかこの本と『カチッ』と目が合ってしまい、そのままスタバに同伴しました。笑
大学生の頃から18年間ずっとコンビニのアルバイトをしている、36歳・独身の恵子の物語。
“社会に出て、就職して、結婚して、子供を産む” という社会通念(いわゆる「普通」)から外れた者は、常に説明を求められ、
人は、「普通」という枠にはめたり、はまったりして安心したがるものだ、
といったところがテーマの主軸だろうか。
冒頭の、コンビニの音(世界)の描写が、素晴らしかった。
また一方で、恵子が『普通でない』と周りから判断されてしまう記述も、ドキリとするものがあり、こちらも良かった。
そしてそのどちらの感性も、女性特有のものだと思う。(なので、女性の方がこの本を楽しめると思います)
ラストは突然ブツッと終わってしまった感じがして、少し物足りない気もしましたが、総じて言えば、面白かったです
(芥川賞を受賞するような長さの作品の終え方というのは、なかなか独特な難しさがありますからね)
受賞会見で、この作者の村田さん自身がコンビニでアルバイトをしている発言をしていて、話題になりましたよね。
そう。
芥川賞って、自分の身の回りのことを書いて受賞している作品が多いんだよなー。
『作家』の真価は、自分の周りにあるものをある程度書き尽くした後に、何が書けるのかだと私は思っているので、
芥川賞受賞作品を読むと大抵は、
ふむ。貴方の人生の一部を読ませていただきました。
独特な視点、とても面白かったです。
でもその先何が書けるのですか?
と、生意気にも思ってしまうことが多いのです。
しかし、今回はなんとなく、この人は書いていけるのだろうと思いました。
村田さん。この先の作品も楽しみだな…
ん?これが青田買いの楽しみなのか?!
