「それで、冬会(ふゆかい)ちゃんの病室ってどこだったっけ」
ぶつかった後、号室を聞いたのだが、色々と考え事をしてて忘れてしまった俺が再びそう尋ねると頬をぷくっと膨らませながら、その女の子――在処ちゃんは後ろを向き、車椅子を押している俺を見上げてきた。
「さっきから、何度も言ってるんですけど、学習能力が皆無なんですか? 在処って呼んでくださいよ」
在処ちゃんは自分自身が名字で呼ばれた事が気に食わなかったのか、そう指摘した。
「まぁまぁ、そう不愉快にならないで」
「嫌でも不愉快になりますよ。冬会ですから」
「じゃあ、在処ちゃんの病室はどこ?」
「あ、ここです、ここですよ」
会話している間に辿り着いていたらしい。病室は――いわゆるVIPルームというやつだった。
道理で在処ちゃんの病室を探しても分からないわけだ。ただの一般病室じゃなかったという事だ。
「あれ、顔が引きつってますよ?」
在処ちゃんはまたニコリと笑った。贅沢にも在処ちゃんの病室は個室だった。
「ふぅ、個室って嫌なんですよね」
在処ちゃんは個室の利点を知らないらしい。俺はその利点を懇切丁寧に教えてあげようとした矢先、その言葉には続きがあった事を知った。
「――在処には誰も話相手がいないですし」
軽く俯きながら、そう独り言を呟く姿は何処か寂しそうに見えた。
実際に、遠回しながらも寂しいと主張していたのかもしれない。ここは「俺でよければ話相手になろうか」と声をかけてあげれば解決するかも知れなかった。
さっき在処ちゃんとぶつかった件もあり、俺でも力になれたらと思い、その一言を言おうと決めた。
「俺で――」
「お兄さん、ありがとうございます!」
即答だった。
というより、俺がこう切り出すのではないかと謀っていたかのようなタイミングだった。
「はぁ、しょうがないなぁ」
「えっ、何がですか?」
キョトンとする在処ちゃんは俺と会話が噛み合っていなかった。
「いや、『何がですか?』って言われても俺が冬――在処ちゃんの話相手になってあげる云々の話じゃないの?」
「在処をここまで連れてきてくれてありがとうございます、という意味ですけど」
お互いに食い違っていた。いや、在処ちゃんは狙っていたのかも知れない。
天然で。
ぶつかった後、号室を聞いたのだが、色々と考え事をしてて忘れてしまった俺が再びそう尋ねると頬をぷくっと膨らませながら、その女の子――在処ちゃんは後ろを向き、車椅子を押している俺を見上げてきた。
「さっきから、何度も言ってるんですけど、学習能力が皆無なんですか? 在処って呼んでくださいよ」
在処ちゃんは自分自身が名字で呼ばれた事が気に食わなかったのか、そう指摘した。
「まぁまぁ、そう不愉快にならないで」
「嫌でも不愉快になりますよ。冬会ですから」
「じゃあ、在処ちゃんの病室はどこ?」
「あ、ここです、ここですよ」
会話している間に辿り着いていたらしい。病室は――いわゆるVIPルームというやつだった。
道理で在処ちゃんの病室を探しても分からないわけだ。ただの一般病室じゃなかったという事だ。
「あれ、顔が引きつってますよ?」
在処ちゃんはまたニコリと笑った。贅沢にも在処ちゃんの病室は個室だった。
「ふぅ、個室って嫌なんですよね」
在処ちゃんは個室の利点を知らないらしい。俺はその利点を懇切丁寧に教えてあげようとした矢先、その言葉には続きがあった事を知った。
「――在処には誰も話相手がいないですし」
軽く俯きながら、そう独り言を呟く姿は何処か寂しそうに見えた。
実際に、遠回しながらも寂しいと主張していたのかもしれない。ここは「俺でよければ話相手になろうか」と声をかけてあげれば解決するかも知れなかった。
さっき在処ちゃんとぶつかった件もあり、俺でも力になれたらと思い、その一言を言おうと決めた。
「俺で――」
「お兄さん、ありがとうございます!」
即答だった。
というより、俺がこう切り出すのではないかと謀っていたかのようなタイミングだった。
「はぁ、しょうがないなぁ」
「えっ、何がですか?」
キョトンとする在処ちゃんは俺と会話が噛み合っていなかった。
「いや、『何がですか?』って言われても俺が冬――在処ちゃんの話相手になってあげる云々の話じゃないの?」
「在処をここまで連れてきてくれてありがとうございます、という意味ですけど」
お互いに食い違っていた。いや、在処ちゃんは狙っていたのかも知れない。
天然で。