美輪明宏というと,若い時は何か良く分からないけれども非常に不思議な雰囲気をもった,近づきがたい感じの方だと思っていたのだが,昨年末の米良美一さんお講演会の中で,美輪さんのことをとても尊敬していると言われたことを思い出し,今回こちらでコンサートが開かれるということで初めて観にいくこととなった。立見席が出るほど大盛況だった。人・人・人の渦。年齢層も小学生から80代くらいのご老人まで様々な方が来られていた。
何で美輪さんが聴衆に大人気なのか,こんなにも人を引き付けるのだろう。
それは,彼(女?)が日本人が忘れかけていた大切な心を思い出させてくれるからだと私は思う。
戦前・戦中・戦後を生き抜いてこられた,まさに生き証人なんだと感じた。歌はもちろんのこと,彼の語りに人々は魅了される。彼の話を真剣に聞かなければ,日本人が本当に大切にしなければならないものを見落としかねないと,本能で感じられる内容だからだ。
美輪さんは言う。
「今の世の中が厳しい,厳しいといわれるけど,戦中や戦後の焼け野原で,何もない中で人々が今では考えられないような生活を強いられていたことを考えれば,皆さんは幸せですよ。」っと言われた。
実際の従軍慰安婦の人たち話や戦争にとられた若者たちの話。
その人たちが国(その時代の権力者やその賛嘆者達)にモノのように扱われていたこと。
同じ日本軍,日本人の間でも,他人の人権を平気で踏みにじり,人を人とも思わないような日々が実際にあったことは,日本にとって恥であったと言われていた。
同じ日本人の間ですら,厳しい世の中であるのに,人を人として扱わない悲惨な事実がまかり通っていたこと,私もそのことを非常に恥じる。
戦争とはすべてを狂わせるものである。
平静を装った人物も,あっという間に動物的になり,理性を失う。平気で人を裏切る。一番怖いのは実は人間そのものであること。
今の世の中がその頃の時代に比べて数倍,否,数百倍幸せな世の中だと私も思う。
そして,そのことを意識をしないと,今後,同じような過ちの歴史を繰り返してしまうかもしれないという危機感を常に持ちながら,私は生きていく義務があると感じた。
米良さんの講演で,「ヨイトマケの唄」を歌われたのを思い出す。実は,昨日,この唄の元祖である美輪さんが歌われて,ふと思いだした。
この歌は,桑田圭祐や槇原敬之も歌っているのだけれども,この曲は美輪明宏が作詞・作曲したものだ。この歌は発表後まもなくして放送禁止となり最近まで歌われることがなかったが,2000年に桑田圭祐がフジで歌い,その後様々なアーティストに詠われるようになった。桑田は,この曲を21世紀を代表する曲だと述べている。
桑田圭祐『ヨイトマケの唄』
でも,やはり本場が一番いい。感動した。歌詞をよく見てほしい。(僕達へ)
越路吹雪の歌う『愛の賛歌』は,フランス語のオリジナルの曲と違うことも分かったわ。フランス語で歌う美輪さんの曲は素晴らしかった。感動した。歌う前の日本語の語りが,オリジナルの歌詞の訳。僕達も是非聞いてほしい。
追記:市民会館の受け付けには,君達の先輩方の姿が見えたわ。分かるだけで3名。スタッフとして働いていましたよ。野球部出身だった。以前の保護者にもお会いしたわ。お元気そうで良かった。