転がるお前に『苔』は生えない

R.E.M.

「AUTOMATIC FOR THE PEOPLE」  1992

Drive
Try Not to Breathe
Sidewinder Sleeps Tonite
Everybody Hurts
New Orleans Instrumental No. 1 [Instrumental]
Sweetness Follows
Monty Got a Raw Deal
Ignoreland
Star Me Kitten
Man on the Moon
Nightswimming
Find the River



カート・コバーンが最後に聴いた作品としても知られる通算8作目は、

バンド最大のヒットを記録した前作 『アウト・オブ・タイム』 につづきさらに深みを増した出来ばえで、

最高傑作との呼び声も高い。

元ツェッペリンのJ.P.ジョーンズがストリングス・アレンジを担当。

“死と運命”がテーマとあって、R.E.M. の内省的な世界観を築いていて、

鬱蒼とした空気に覆われているが、次第に救いと希望を得ていく展開は感動的。


讃えることしかできない。悲しみに満ち、怒りに満ち、愛に満ちたアルバム。


カレッジ・ロック時代とはまったく違う。


垢抜けし、メロディーも非常にポップだ。


けどこの暗さはポップスとは明らかに一線を画している。



R.E.Mの凄さは曲作りのセンスの良さ、独特のサウンド、

マイケル スタイプスのユニ-クなボ-カルにある。

彼らがデビュ-した'80年代はある意味で『ロック』の停滞期であったが、

そこに彼らのような、斬新でアコ-スティックでいかにもアメリカらしいサウンドが現れ、

あっというまに全米の、いや世界中の若者の心を掴んだのである。

このアルバムに収められている全ての曲が素晴らしい。

リ-ダ-格のマイケルはまさに天才に近いミュ-ジシャンである。


NIRVANAのカート・コバーンが自殺をしたときに聞いていたアルバムとしても有名だが、

日本では洋楽ファンでも意外とそのことを知る人は少ないのではないだろうか。

カート・コバーンがかつてインタビューの中でR.E.M.のメロディーセンスについて

「あれだけ美しいメロディーをデビュー以来書き続けているなんてまるで神のようだ」

という種の発言をしていたが、

このアルバムはまさにカートのそんな言葉通りの珠玉のメロディーであふれている。

それでいて少しも媚びたところを感じさせずに、

ロックとしての完全な立ち居地をも体現している様はまさに最強のロックバンドと呼ぶにふさわしい。



前述したが、アルバム全体として重い空気が漂っているのだが、

その重さは決してリスナーを拒否しているのではなくむしろ、

その重みが絶対的な安心感を聴く側に与える。

単なるナルシシズムとしての重みでも、誰かに強制するような類の重みでもないし、

自虐的なそれでもない。

かといって心地よい暖かみのある重みでもない。

R.E.M.はいつもそうしてきたようにこのアルバムでもリスナーに問いかけているのである。

そしてその問いかけは決してわかりやすいものではない。

8曲目の「Ignoreland」 のようなアメリカの政治に対する直接的なメッセージよりも、

むしろその問いかけは個別の曲を越えてアルバムを聴き終えたときに漠然とリスナーに届く。

静かだが時計の針のように確実な鼓動が頭のどこかで聞こえてくる。


アルバムのハイライトは90年代オルタナが生んだ珠玉の名曲「Man on the Moon」、

「Nightswimming」、

そしてアルバムの抱えていたすべてを解き放つ「Find the River」のラスト3曲。

おそらくこのラスト3曲の流れはロック史全体を見渡しても最も美しい流れの一つではないだろうか。




そんな話




U2のボノが、「この作品は、最高のカントリー・アルバムだ」と賛辞を送った

この発言に対して噛み付く輩も居ない訳ではないが、

たんに彼は、

「みんなの琴線に触れる作品だから、絶対聞いたほうがいいよ。」

って言いたいのだと思うけど…


ボノって、某国政治家たちみたいな、失言が多い人って訳ではないけど、

その発言がシンプルすぎて、反感買うってのが多々あるかも。


パティ・スミスへリスペクトの意味をこめて

彼女への賛辞の中に

ロック史における偉大な先人に対して尊敬の意味で「(俺達の)Mother…」って言ったら、


「私はアンタの母親じゃないわ、ファッ●・ユー!」

と、彼女からありがたい(=怒りの意味)お言葉を頂戴した…


ってのは有名な話。