実家へ電話をかけた。
自分の実家は原発から300kmは離れている。
福島原発で起きた事の影響は、そこまで及ぶ可能性は少ないと考える。
電話には母が出た。
懸命に自分の波立つ心を鎮めながら話す。
「福島の原発が、もし本格的にまずい状態になるようなら、友人も含め
数人でそちらへ行く事を考えている。道路もまだどうなっているかわから
ないし、ガソリンもないから、辿り着くのは難しいかもしれないが、とにかく
そこを目指すから。」 と。
それを聞いた母は、言った。
「そんな深刻にならなくても大丈夫だから、とにかくあまり心配し過ぎると
かえって具合悪くなるからね。あまり心配しなくて大丈夫だよ。こっちに
来るなら来るで、何も心配ないからね。米もいっぱいあるから。」
涙声になりかけ、つまりそうになるのをぐっとこらえた。
勤めて平静を装う努力をしながら
「うん、わかった。とにかく、行く事になったらよろしく。」 と伝える。
母の声は明るく感じる。
本当に楽観視しているのか、それとも自分に心配させまいとしているのか。
自分の母の事だから、あながち前者も否定出来ない。
さて、今ある少ないガソリンでどうやって実家を目指せばいいのか。
途中でガソリンの補給は絶対必要になるだろう。
では、補給出来る場所があるのか?
思考はネガティブな方向へ、脇目もふらず全力疾走中。
とにかく、車内で何日も過ごすはめになる可能性も考えて、食糧の事を
考える。最悪、何かを腹に入れる事最優先で、味は二の次になるだろう。
やはり最後の切り札は砂糖かな。
今は、福島原発の動向を見守るしかない。