ネスレ:堅実に成長を続ける有名ブランド企業

2022年、市場のセンチメントは変化しました。急成長を遂げ、「ディスラプター(これまでの業界秩序や商習慣にとらわれることなく、斬新なビジネスモデルを市場に持ち込んで、あっという間に顧客を獲得して急成長する)」だと胸を張っていたハイテク企業の人気は失われました。これらの企業の多くは気前のいい約束をしていましたが、控えめに言っても、それらの約束のほとんどは果たされていません。

市場でほとんど忘れられていたような企業が再び支持されています。経済状況に関係なく、強力な企業は着実に成長しています。

そのような会社の1つとして、また、長期保有銘柄の1つとして人気があるのは、世界最大の食品および飲料会社であるNestle (NSRGY)です。



詳しく見てみましょう

Nestleは1867年にスイスのヴヴェイで乳児用調製粉乳メーカーとしてスタートし、現在では30以上の有名ブランドを展開し、それらの売上は同社の売上の4分の3を占めています。

米国で有名なネスレのブランドは、Gerber、Perrier、San Pellegrino、Nesquik、KitKat、Nestle Toll House、Nescafe、Nespresso、Starbucks Coffee At Home、Hot Pockets、Stouffer's、Buitoni、DiGiorno、Lean Cuisine、Carnation、 Coffee-Mate、Nestea、Boost、Dreyer's、Häagen-Dazs、NestléIce Cream、Purina、Alpo、Cat Chow、Fancy Feast、Friskies、Dog Chow、Benefulです。

Nestleが2021年に3.3%増の945.5億ドルの売り上げを記録したとき、証券会社のRBC Capital Marketsは、Nestleを非常に退屈だが好ましい銘柄だと述べました。これは非常に的を射た表現だと思います。

ただ、現在は、食品業界に投資するには難しいタイミングです。同業界は、輸送価格や原材料価格の高騰によるコスト上昇の価格転嫁と、厳しさを増す消費者のお財布事情との間で苦しんでいます。

しかし、有名ブランドが安定していることで、Nestleは好調です。それらのブランドの人気は驚くほど根強く、2020年初めから値上げを数回繰り返しているにもかかわらず、売上が大幅に減少することはありませんでした。

実際、最新の結果として、Nestleは2022年の第1四半期に既存事業売上高が7.6%成長しました。これは、2022年初来の製品ライン全体の平均値上げ5.2%を上回っています。

Nestleの成長は、コーヒー(粉末飲料と液体飲料が7.3%成長し、取引マージンは23.5%)やペットケア(13.6%成長し、取引マージンは21.1%)などの高品質のカテゴリーによって引き続き牽引されています。

Nestleの価格決定力の要因の一つは、同社のブランドの3分の1以上がネスプレッソコーヒーカプセルのようなプレミアム製品を提供しており、それらの消費者の価格上昇に対する耐性が、通常、低所得層の消費者に比べて優れていることです。

Nestleによると、年初以来、手頃な価格の製品部門とプレミアム製品部門の両方が、すべての製品部門の平均以上に成長しています。

Nestleの経営陣は、インフレが継続しているため、今後数か月の販売量にある程度の影響が見られると予想しています。それでも、Nestleは2022年中に再び価格を引き上げる予定で、2021年同様、営業利益率は17%から17.5%の間で安定すると予測しています。

この勢いの裏側で、Nestleは変化を続けています。消費者心理に大きく左右される食品業界に身を置いているにもかかわらず、5年にわたる変革によって、Nestleはインフレと不況(スタグフレーション)を乗り切るのに適した、ある意味では、新しい会社になっています。

「新しい」Nestle

マーク・シュナイダー氏は2017年にNestleのCEOに就任し、変革に着手しました。

変革には、ブランドの5分の1を売却し、スキンケア、米国のボトル入り飲料水、コールドカット(さまざまな種類のハム・ソーセージなどの冷肉の薄切り料理)といった人気のないカテゴリーの事業から撤退することが含まれていました。

シュナイダー氏は、コーヒー、健康とウェルネス、ペットフードなどの高成長製品カテゴリーへの投資に焦点を当てました。全体として、この高成長部門は、2020年までに全売上高の3分の2を占めるまでに成長しました。これにより、2021年までの4年間で、営業利益率が1パーセント上昇し17.4%に達しました。

健康関連の分野では、Nestleは昨年、植物ベースのタンパク質ブランドであるOrgainとサプリメントメーカーのThe Bountiful Companyを買収しました。

さらに重要なことは、同社の研究開発費は年間20億スイスフラン(20.8億ドル)にまで増加し、売上高の2%に相当します。これは食品部門としては高い水準で、Nestleはビーガンキットカット、植物ベースのマグロ、植物ベースのコーヒークリーマーを発売することで、新しい市場への参入や市場拡大に成功しました。

消費者は相変わらずお菓子を食べ続けているわけですが、それらが健康的なお菓子へと置き換わっていくのは興味深いことです。Nestleのお菓子の売上高は、2022年の第1四半期に自律的成長が10.5%となったことで、社内平均を上回りました。さらに、Nestleは2021年にベジタリアンおよび植物ベースの食品の売上高を8億3000万ドル以上増加させ、同カテゴリーで2桁の成長を遂げました。

Nestleへの投資

モーニングスターは、Nestleについて「Nestleはインフレ圧力の影響を受けず、広い堀がクラス最高のパフォーマンスをサポートします。」と説明しています。 食品業界の一流企業と言えるでしょう。

NestleのPER(株価収益率)は約18倍で、Procter & Gamble(PG )が25倍、PepsiCo(PEP )が23倍であることを考えると、株式は割安と言えます。にもかかわらず、同社は同業他社よりも優れた業績を上げています。

Nestleは、長い間1桁台半ばの成長を続けており、それによって過去26年連続で穏やかに増配を続けてきました。米国企業では無いにもかかわらず、いわゆる「配当貴族」になりました。そして、このすばらしい実績が途絶える気配はありません。

Nestleは、配当と自社株買いを組み合わせることで、2007年から2021年の間に1,850億スイスフラン(1923.7億米ドル)を株主に分配することができました。このような予測可能なリターンのパターンから、Barclays Capitalのヨーロッパのアナリストは、この銘柄を「債券代理人の王様」と呼ぶようになりました。

Nestleは、同社の株式をサポートするべく、2022年にあらためて自社株買いを行うための資金として104億ドルを用意しています。さらに資金が必要な場合は、化粧品大手L’Oreal (LRLCY)の20%分の保有株式から資金を充てることができます。同社は過去5年間、その一部を売却してきました。

結論として、Nestleは防御的に保有する株式としては敵なしと言えます。2022年、このまま市場のセンチメントが改善しなければ、投資家のスタグフレーションに対する恐れが深まるにつれて、Nestle株の需要は増加するでしょう。

Nestle (NSRGY)は、115ドルから125ドルが購入のいいタイミングと考えられます。