INTCのフラッシュメモリ事業売却後、AMDがXLNX買収に合意

IntelによるNAND型フラッシュメモリ事業の売却をきっかけに、半導体業界が統合に向けて大きく動出すと、先日、お伝えしました。

その数日後、実際に大きな取引が発表されました。

Advanced Micro Devices(AMD)がライバルのチップメーカーであるXilinx (XLNX)を総額350億ドルの全株式取引で買収することが決まりました。
 

Advanced Micro Devices(AMD)

 

Xilinx (XLNX)


XLNXの株主は、XLNX1株あたり約1.72株のAMD普通株式を受け取ります。現在のAMDの株主が合併後の会社の株式の74%を所有し、XLNXの株主が残りの26%を所有します。

AMDは、地政学的な弱さがあったのでXLNXに飛びつきました。米国での通信機器の販売が禁止されている中国の通信大手Huaweiは、XLNXの顧客です。AMDの関心の噂が広まる前、XLNXの株価は2019年春の最高値から22%下落していました。

また、AMDは自社株式の最高値更新を続けています。パンデミックによって、消費者が自宅で仕事、学習、遊びを強いられていることで、データセンターだけでなく、PCやゲーム機の売上も伸びているからです。AMDは、来月発売される新しいXbox SeriesXやPlayStation5など、コンピューターやゲーム機用のチップセットを設計しています。今年はゲーム機の需要が旺盛です。

この取引の規模は、これまでのAMDによる買収の中で最大です。実現すれば、13,000人のエンジニアと27億ドルを超える年間研究開発費を備えた統合企業が誕生します。

最も重要なことは、この取引により、データセンター大手になるという同社の野心が増幅されることです。

XilinxのCEOであるVictorPeng氏は、両社が合併することで、「最大のデータセンター」をはじめとして、自動車・防衛・通信・産業の各部門に関わる多数のモノのインターネット(IoT)デバイスの顧客にまでサービスの提供が可能になると述べました。ちなみに、データセンターとは、クラウドコンピューティングと機械学習に必要なコンピューティング能力の多くが集中している場所です。

両社の合併は、Intelとの闘いの新たな火種になるかもしれません。収益性の高いデータセンター用チップ製造市場で、より大きなシェアを獲得するために、AMDとIntelは戦いを激化させる可能性があります。

AMD:敗者から勝者へ

この取引により、AMDは幸運を引き寄せました。

つい5年前まで、両社によるこのような大逆転劇は起こり得ないと思われていたでしょう。株式市場の評価額が30億ドル未満だったAMDはライバルであるIntelに決定的な遅れをとっていました。そして、AMDは追いつくなどことなど決して考えていないように見えました。

当時、Intelは、チップ製造を専門とするAlteraを買収することでリードを広げるとともにその勢力も拡大していました。

XilinxとAlteraの両社によって製造された特殊なタイプのチップは、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)として知られています。これらのチップは、増大するデータセンターの役割の根幹を担いつつあります。FPGAは、ディープラーニングに使用されるニューラルネットワークのトレーニングを高速化する加速装置として機能します。また、顧客による設定の調節が可能なので、コンピューターを利用した作業量の変化に応じてFPGAをよりよく適応させることができます。

AMDの経営陣は、さまざまなデータセンターのニーズに対応するすべての製品を備えていないチップ企業は、長期的には遅れをとる可能性があることを理解しています。

確かに、AMDがそのビジョンを実現するまでには長い道のりがあります。データセンターの顧客による売上は、最近の四半期のXilinxの売上の14%しか占めていませんが、30%のづつ成長しています。また、Xilinxは、Nvidia(NVDA)が支配するグラフィックスプロセッシングユニット(GPU)市場にも小規模ながら参入しています。
 

Nvidia(NVDA)

 

しかし、AMDは長期的な成功へ道のりを正しい足取りで進んでいます。いつの日か、FPGAとCPUが1つのチップ上で組み合わされ、個々の顧客のさまざまな用途における最適化が可能になるかもしれません。

この取引によるAMDの主な短期的メリットは、多様化によるものです。この買収により、同社は、Xilinxの売上の大部分を占めている自動車市場と5G基地局市場でその勢力を拡大することができます。

これで、intelが現在苦戦している理由が理解できたのではないでしょうか。これら以外にも、AMDはこの取引以前にPCとサーバー用の高い評価を受けている新世代チップでIntelに大きな打撃を与えています。その上、金融筋が7月に製造業の大幅な遅れを発表して以来、Intelの株価は25%下落しています。

AMDは再びチップ業界の中心と見なされるかもしれません。そう遠くない未来について言えば、インテルよりその可能性は高そうです。