米中のハイテク冷戦の激化を理由に売却すべき半導体株

アメリカと中国の間で紛争が発生していることは間違いありません。しかし、この戦いが戦場で繰り広げられることはないでしょう。代わりに、米国とソビエト連邦の間の冷戦が思い出されます。

この新しい冷戦には、過去の冷戦と1つの大きな類似点があります。この米中間の科学技術に関わる争いは、米ソの宇宙開発に起因した争いを彷彿とさせます。

ただし、大きな違いもあります。米国と中国の経済は、米国とソビエトの経済よりもはるかに絡み合っています。たとえば、中国には米国よりも多くのケンタッキーフライドチキンレストランがあります

では、あらためて科学技術について考えてみましょう。インターネットがまだかなり新しいものであったころ、知識の共有は単一のフィールドで行われ、オンライン経済は世界中でつながるものだと人々は考えていました。

しかし、現実は異なっています。米国と中国は、共通のプラットフォームがほとんどない、2つの完全に別個のデータ界形成に向かって急速に動いています。鉄のカーテンの代わりに、ハイテクのカーテンが降りてきているのです。

その例はいくつもあります:検索(Baidu対Google)、メッセージングおよびソーシャルメディア(WeChat対WhatsApp、Facebook、Twitter、Instagram)、音楽(Kugou対Apple Music、Pandora、Spotify)、支払い(Alipay対PayPal)、マッチング(Momo vs Tinder)。TikTokでさえ、どちらもByteDanceが所有しているにもかかわらず、中国のDouyinとは別けられています。

これは良いことなのでしょうか?

米国のテクノロジー企業にとって、答えは「NO」です。

輸出規制ブーメラン

ブーメランという単語をの意味は誰もが知っているでしょう。これは、発信者に戻るという意味で使われ、多くの場合、否定的な結果をもたらすものです。そして、現在の米国の通商政策はブーメランの大きなリスクをはらんでいます。

米国技術に関わる中国企業を追いやるために、輸出規制が拡大しています。目標は、グローバルなサプライチェーンにおける米国内のハイテク企業網をほぼ完全に遮断し、中国の利用者の一部を強制的に排除することであるように思われます。

実際、巨大な中国市場によって勢いを得ていた米国内の半導体企業は寸断を引き起こしています。彼らは、これらの輸出規制が収入源に大きく影響すると主張しています。

米国内の半導体メーカーの巨大市場網を永久に排除することは悪いニュースです。

Peterson Institute for InternationalEconomicsのChad Bownは、中国企業は他の場所から購入できるため、輸出規制は中国企業が重要な技術にアクセスできないようにするという国家安全保障の目標を達成していないと主張しています。半導体企業自身もそのように述べています。

実際、サプライチェーンはグローバルなものです。中国の主要なサプライヤーの1つは、韓国のSamsungでしょう。比較的近い将来、台湾と中国に拠点を置く他のさまざまな企業が米国企業に取って代わる可能性があります。

トランプ政権がHuaweiを取り締まったことで失われた契約を自分のものにした企業はどこでしょう。それはアメリカの会社ではありません。Samsungです。

米国企業が被る恒久的損失の長期的影響について少し考えてみましょう。これらの損失は、例えば、米国の半導体企業の研究開発費の縮小に繋がり、長期的な競争力を低下させ、米国の半導体産業を枯渇のリスクにさらします。

半導体セクターの勢力バランスが崩れ始めている兆候はすでに出ています。最新の7 nmチップ技術への移行に伴い、Intel(INTC)はプロセスエンジニアリングのリーダーとしての地位をTaiwan Semiconductor (TSM)に奪われました。TSMがその市場シェアを拡大​​しているにもかかわらず、Intelはその市場への参入さえ今のところ出来ていません。

Intel(INTC)


全体像

ドイツ銀行のグローバルハイテク戦略の責任者であるApjit Walia氏は最近、非常に興味深いレポートを発表しました。このレポートでは、大規模なハイテク冷戦の今後5年間のコストは3.5兆ドルにのぼる可能性があると述べています。

3.5兆ドルには、中国からの国内最終需要の年間4,000億ドル減少と、ハイテクのカーテンが原因でライバル社のインターネットプラットフォーム、オペレーティングシステム、通信システム、支払いシステムを取り扱う企業が必要とする年間追加コスト1,000億ドルが含まれ、残りの1兆ドルはグローバルサプライチェーンの再構築と再構成から発生します。これは主に、現在中国を製造拠点として使用している最終財メーカーにかかります。

このハイテク冷戦は、消費者レベルにまで影響します。ドイツ銀行の調査によると、アメリカ人の41%と中国人の35%が、今後お互いの商品を購入しないと述べています。

このような争いに勝者はいません。最大の敗者は、中国市場から多くの収益を上げている米国企業でしょう。Apple(AAPL)であれば、収益のほぼ20%が中国からのものです。

しかし、最も依存度が高いのは半導体企業です。Qualcomm(QCOM)は、収益の約3分の2を中国から得ています。Micron Technologies(MU)は約57%です。他にも、Qorvo(QRVO)が52%、Broadcom(AVGO)が50%、Texas Instruments(TXN)が44%、Advanced Micro Devices(AMD)が39%、Veeco Instruments(VECO)が36%、Maxim Integrated Products(MXIM)が36%です 。

興味のある方のために、Intelは収益の約26%を中国から得ており、Nvidia(NVDA)は約24%です。上記のAppleとNvidia以外の銘柄は避けるべきです。