支援教育の専門性を高めて欲しい! | 誰もが違うということを前提とした教育にしていこう!

誰もが違うということを前提とした教育にしていこう!

主に特別支援教育、インクルーシブ教育、ASD、ADHD、LD等について書いていましたが、社会全体が大きく変わってきており、特定した話だけでは答えのない答えを導き出せない時代がやってきたと感じています。そのため何でも思いつくままに書いています。

支援教育の専門性高めよ

 愛知県西三河地方の小学校で1月上旬、特別支援学級の担任教師(58)が、知的障害を伴う自閉症の4年生男子児童(10)の行動に腹を立て、両手をひもで縛り、保護者への連絡帳に「たいほしました」と書いていたことが明らかになった。自閉症などの発達障害の子は増えているが、教師の知識や教育技術は、まだまだ遅れていることが多い。これは子どもにも教師にも不幸な状況だ。国は特別支援教育の専門性を高めることにもっと力を注いでほしいと思う。
(編集委員 安藤明夫)

対処法分からず

 この事件では、男児が休み時間に机を片付けだし、教師がやめさせようとしたが、聞かなかったため「逮捕する」とビニールひもで両手首を縛った。「もうしないか」と問うと「もうしない」と返事したため、1分弱で解いたという。この男児は何をされたのか理解できていない。教育として無意味で人の尊厳を冒す行為だ。なぜ、こんな体罰が起きたのか。

 教師は50代半ばで同学級の担任になり、男児の入学から関わってきた。もともと男児はおとなしくて静かな子だったが、家庭環境が変わり自宅の引っ越しを伴ったことがきっかけになって、昨年秋から教室で机を片付けたり、電気を消したりするようになった。対処方法が分からなかった教師は、しかっても聞かないことに腹を立て、体罰に至ったようだ。昨年11月の連絡帳にも、やめさせようとして声を荒らげ、男児が大泣きしたことが記されている。

 事件の後、発達障害に詳しい小児科医が教師たちに指導した。自閉症という障害の特性を説明したうえで、時間割を絵カードなどで視覚的に示したり、集中力を高めるためについたてを使うなど、子どもが落ち着きやすい環境づくりをアドバイスした。また、障害児教育の経験のある教師が担任に加わり、同学級は教師3人態勢となって、「すっかり落ち着いて登校しています」と男児の母親は喜ぶ。

いじめに発展も

 発達障害は、障害の表れ方が千差万別で、その子の抱える苦痛や混乱が周囲から理解されにくい。言動が「身勝手」と誤解されることも多い。教師の知識不足が問題をこじらせたり、普通クラスではいじめの対象になる場合も珍しくはない。

 発達障害の増加に対応するため、国も教員の知識・技術の向上を急いでいる。特別支援教育の推進に関する中央教育審議会の昨年7月の報告では「すべての教員は、特別支援教育に関する一定の知識・技能を有していることが求められる。特に、発達障害に関する一定の知識・技能は、発達障害の可能性のある児童生徒の多くが通常の学級に在籍していることから必須である」と提言している。

 しかし、新しい知識を身に付けるための教員研修の受講率は全国平均で63.4%と決して高くない。一定の研修や専門教育を受けた教員に与えられる「特別支援学校教員免許」も、特別支援学校の教員は70.3%が持っているが、特別支援学級だと小学校32.8%、中学校27.0%にとどまる。他の教員から相談を受けるべき立場の人がこの数字だ。問題を起こした担任教師も持っていなかった。

 さらに、新しい研究成果が次々に発表されている今、同免許を持っていても専門性があるとは限らない。辻井正次・中京大教授(発達臨床心理学)は「発達障害に特化した教員免許を新設する必要がある」と話す。それぞれの子の特性を正しく理解して教育計画を立て、子どもの混乱や苦痛を軽減していくには、各校に本物の「プロ」を配置することが大事だという。

 学校外部の専門家や保護者との連携も重要だ。「この子は何に困っているのか」「どうしたら苦しみを軽くできるのか」を意見交換できる場があれば、体罰など起こらないはず。そのためには学校側の意識変革だけでなく、医師や臨床心理士たちも、もっと障害児教育に協力する姿勢を持つことが必要だと思う。
【中日新聞2013年3月10日】