キャセイ機の窓から目の前に迫る九龍城砦の

今にも崩れ落ちそうな混沌としたビル群をギリギリ間近に見ながら

このまま突っ込んじゃうんじゃない!と恐怖を覚えて思わずグッと身構えていると

間も無く唐突に視界に飛び込んでくる滑走路にホッと息をつくというルーティンを

僕は啓徳空港に降りるたびに繰り返していた。

 

僕が大学生でまだ僕の父親が存命だった頃に

僕はよく父のビジネスに同伴して香港を訪れた。

父が誘ってくれたからということもあったが

僕はその街に一度訪れた時からすっかり魅了されてしまったというのが

何度も訪れていたいちばんの理由だった。

 

街全体を覆うむせるような南国特有の湿気

路地のあちこちに漂う獣のような生臭い匂い

ビル街の中を迷宮のように這い回る暗い暗渠のような路地

道のあちこちでネオンを翻すエアコンの排水の水たまり。

 

表通りに出ればビルから突き出す毳毳しい極彩色の漢字ネオンが

鬱蒼と茂る密林のように道路にびっしりと覆いかぶさり

無秩序に点在する飲食店の店先には

どの店にもアメ色をした北京ダックがズラリとぶら下がり

軒下の水槽には見たこともない魚が悠然と泳ぎカニや鮑が蠢く。

 

偽ブランド品を勧める怪しげな呼び込みにどの辻々でも声をかけられ

眩しいほどの光と強烈な化粧品の匂いがコスメティックショップからはこぼれ

高級時計店の前には厳ついライフル銃を構えた屈強な警備員が肩をいからせる。

 

僕はそんな街に日本では決して感じたことのなかった

人々の生きるエネルギーみたいなものをいつも感じていた。

その街にいるだけで僕にまで力が漲ってくるような気がした。

そんな大好きだった街だが父が亡くなって以来

ここ何十年もすっかり足は遠のいていた。

 

昨日長女から「香港に来ています」と写真が送られてきた。

Centralだという写真は整い過ぎていて僕の記憶の中の風景とあまり一致しなかったが

夜に送られてきた九龍ペニシュラの先からの香港島の夜のビル群を写した写真は

僕の記憶の夜景よりも何倍も眩くそして美しくなりながらそれと重なり合った。

 

 

懐かしさが込み上げまたあの街に行きたいなあという思いが

とめどなく湧き上がってきた。

いつも僕に旅の写真を送ってくれて

僕の旅心を掻き立ててくれる長女には感謝しかない。

 

さて次女の夏休み明けの実力テストの結果が出揃った。

数学は88(平均40台)で学年3位

英語が83(平均30台)、国語が69(平均30台)共に順位不明

ということで未だ結果は出ていないが上位3位以内には入ったのではと推測する。

(数学1位の男子は英語がからっきしダメだということだった)

 

ずっとこうなるはずだと思ってやってきた。

次女のいるべき場所はこの辺りだと信じていた。

よく頑張った。

この結果は次女を更なるやる気へと駆り立ててくれるはずだ。

この階段を登っていけ!

 

そしていつもは長女の使っていた問題集の書き込みを励みに頑張ってきた次女だが

数Ⅲが新過程に移行したことも踏まえ新しい1対1対応を買った。

お下がりじゃない問題集は気持ちいいね。

 

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鉄緑会のカリキュラムでは数Ⅲは高1秋に始まり

高2終盤あたりが数Ⅲ新スタ演レベルということだ。

もちろん彼らと競い合えるようになるために

1対1は冬が終わるまでには終わらせる予定。